これで本当に、鋼のを助けることができるというのだろうか?
水を吸って重たくなっている上着を脱ぎ、濡れて肌にまとわりつくシャツから、かじかむ指で不器用にボタンを外すと、ひやりと冷たい外気が胸元に触れる。発火布の手袋もとうに外されていたが、もしはめていたとしても、役には立たなかったろう。
この状況では、あまりにも自分は不利な立場だ。
「お優しいことですね。いや、甘いというべきかしら」
口調こそ淑女のものだが、その声色はむしろ男性でも低い部類に属するもので、ロイの神経を逆撫でした。このオカマ野郎が・・と、ロイは内心で罵ったが、そのオカマ野郎に膝を屈するハメになった自分の迂闊さが、もっと腹立たしい。
「あれを巻き込んだのは、私だからな」
「ご立派ですこと」
男・・レオニードは、喉の奥を鳩のように鳴らして笑い、指先をロイの首筋に差し伸べる。触れる前から、その手が冷気を放っているのが伝わってきて、ロイは思わずビクッと全身を振るわせた。
「怖がらなくてもよろしいんですよ?」
「怖がってなど・・ちょっと寒いだけだ」
「そうですか。まぁ、ご心配ならさずとも、すぐに全身が熱くなりますよ」
「誰がっ・・」
「お嫌でしたら、無理強いはいたしませんよ。アタシだって、どうしてもアナタが欲しいという訳じゃないのですから。アタシが欲しいのはエドワード君で・・でも、アナタがどうしても身代わりになりたいとおっしゃったのだから、こうして・・ねぇ? お分かり?」
ロイは屈辱に奥歯を噛みしめるが、皮肉なことにその反抗的な目の光こそが、相手の嗜虐趣味を喜ばせる結果になっていた。レオニードの青黒い唇がいびつにつりあがり、切れ長の瞳が爛々と光を放っている。
「確かにエドワード君は、10年後が楽しみ・・でも、アタシは何年も待つほど、気が長くないのよ・・アナタと違って」
「鋼のは・・あの子は・・まだ子どもだっ・・」
「でも、アナタだって、エドワード君が欲しいと思っている。だからこそ、彼がアタシに奪われるのが我慢できなくて・・身代わりになってでも護りたいと思っているのでしょう?」
「そうじゃない、ただ、あれはまだ子どもだから、そんなことを教えるのは早すぎると・・」
「15歳は十分オトナじゃないかしら? それとも、あと2、3年も待ってオトナになったら、イイってことかしら?」
「誰が、貴様のようなヘンタイに、鋼のをっ・・!」
「ほらほら・・エドワード君が子どもだというのは、ただの言い訳。素直じゃないのねぇ、まったく・・でも、そんなところがまた、そそるのよねぇ」
レオニードがロイの顎の下を、猫にでもするように愛撫する。ロイの背中がぞわわっとしたのは、何もその指先が冷たかったせいだけではあるまい。
「そんなにあの子どもが好きなのね。そんなに魅力的なんだ・・ますます興味が沸いて来たわ」
「貴様ッ・・約束が違うっ!」
「約束? そんなものしたかしら? アタシが?」
嬲るように冷笑を浮かべながら、右手の指先を顎から首を伝って、胸へと滑らせる。爪を立てている訳でもなさそうなのに、その痕は冷たい痛みを伴って、1本の赤い筋になった。さらに胸から腹を伝い・・ベルトの上で止まる。
「ほら、下も脱ぐのよ」
「鋼のに、手を出さないと約束してくれ」
「そんな口のきき方をして?」
「ぐっ・・や・・約束・・して・・ください」
「ほほほ・・素直な殿方は好きよ」
レオニードが右手を一閃すると、ベルトがナイフで斬ったようにまっぷたつになり、軍服のスラックスもウエスト部分が裂けた。ロイは屈辱に顔面蒼白になりながらも、のろのろとスラックスと下着を脱ぎ下ろす。
「さぁ、膝まづいて。じゅうぶんにアタシを楽しませるのよ? そうじゃないと約束は守れないわ・・膝まづきなさいって言ったでしょ!?」
レオニードに蹴り飛ばされるようにして、ロイが冷たい床に倒れる。漆黒の髪がしどけなく乱れた。
もう・・逃れようはなかった。
【後書き】知らないキャラで、ここまでやるかー?なのですが、巻き込まれてゲームキャラのレオニード君の同盟を作るハメに・・で、私は軽くロイ受けのSSなんぞを・・一応、ベースは精神的なロイ×エド&肉体的にはロイ受け・・だよね、多分。
えーっと・・別にこれ、レオじゃなくても全然構わないストーリーですよね。すげー無節操ロイ(すんません、土下座)。
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