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■寒さしのぎ■


自分の体を両腕で抱えるようにして、エドはソファの上で軽く身震いした。
「う〜〜、さっみい。」
「そうカ?」
両手で腕の辺りをさすっているエドの隣で、リンは平気そうな顔でお茶を飲んでいた。
「寒いだろ!なんでこの部屋暖房も点けてねえんだよ?!」
更にエドは「おまえの恰好見てるだけで余計に寒くなる」と八つ当たりのような悪態をついて、素肌に上着を羽織っただけのリンを指差す。
「ン〜そうかナ。そんなニ寒いとは思わないケド。」
そう言われてもリンはやはりそれほど堪えてない表情だった。

土地柄なのか、リンの生まれ育ったシンの首都部は雪こそあまり降らないが、冬ともなれば冷気が落ちてくるように深々と冷え込んだものだ。
皇子という身分上、そんな寒さを我慢して暮らすような経験はあまりした事は無いが、通りを歩いていても身を切るような風の吹くシン国の寒さに比べればアメストリスの寒さなど、シン国の寒さに馴染んだリンにはものの数に入らない。
これが豪雪地帯だと聞く北部辺りなら、また話は別かも知れないが。




「あ〜〜〜マジ寒みぃ!暖房つけるぞ。」
そう言って立ち上がろうとしたエドの腕を、リンが掴んだ。
「暖房よりも直に暖めてやるヨ。」
「はぁ?・・・・・って、うわ!」
急にぐい、と掴んだ腕を引っ張られ、バランスを崩したエドの小柄な体はあっさりとリンの腕に収まった。
いくら体が小さいとはいえ、普段のエドなら腕を引かれたくらいでこんな醜態は晒したりはしない。しかしこのリンという男、見た目に反してなかなか力が強い。
「ホラ、こうしてたラ、暖かいダロ?」
そう言いながらリンはエドをすっぽりと腕の中に抱き込んでしまう。
その腕の中は、確かに暖かかった。
「・・・・・」
「エド?」
腕の中で無言のエドの顔をリンは覗き込んだ。
照れたような赤い顔を、ふて腐れた表情で誤魔化しているが、それでも大人しくリンの腕に抱かれている。
「・・・・・・・・」
「どうしタ?エド。」
黙ったままのエドに、リンは更に語りかける。
「・・・・・・・おまえ、時々変なところで優しいよな・・・・・・・・」
ぼそりとエドが小声でつぶやいた。
「そうカ?」
クスリと笑ってリンはエドの顔を覗き込もうとするが、リンの胸に顔を埋めてしまったエドの表情を伺う事は出来ない。
リンは更にクックッと喉の奥で笑った。
「まア、下心があるかラ優しくしてるんだけどナ。」
「下心ってなんだ・・・・んっ・・・・」
リンの言葉に不信げに顔を上げた所を狙い澄まして、リンはエドの唇を奪った。




「こういう事かよ。」
唇を離すと、エドが少し怒ったような声で言う。
「ソ、こういうコトv」
涼しい顔で答えたリンは、エドの耳元で囁いた。
「寒い時はいっそ裸デ抱き合った方が暖かいらしいけド、どうすル?」
どうする?と聞きながら、リンの手はすでにエドの服にかかっていた。
「どうするもこうするも・・・・止める気なんかねぇくせに・・・・」
悪態を付きながらも、大人しくされるがままのエドの様子に、リンはにんまりと笑った。

「判ってルんなら話は早いナ。」



END

【感想】『小説バトン』の等価交換として頂きました。
本家のエドウィンでもこんなに甘くならないのに・・とお嘆きでしたが、そんないちゃいちゃぶりがたまりません。ありがとうございました。
初出:2006年02月22日

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