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約束




あのね、兄さん。もし・・もしもだけど、あっちの世界に戻れたらさ、行きたいところがあるんだ。
シャーロットのアイスクリーム・・いや、兄さんとじゃなくて、別の人と・・えっ、誰だっていいじゃないか。

ああ、しつこいなあ。分かったよ、兄さんとも行くよ。美味しいもんね。食べたことぐらいあるよ! 元の体に戻ってからね・・何回か、連れて行ってもらったことがあって。
えっ、僕が一緒に行きたい相手は、その人じゃないかって? 疑り深いなぁ。彼女? そんなんじゃないよ・・そういう関係じゃ・・ああ、そうだよ、パニーニャさんだよ。

僕さ、あっちの世界にいた頃、全然、パニーニャさんの記憶なくって、このキレイなオネーサンはどうしてこんなに親切にしてくれるんだろう・・ってぐらいにしか思ってなくて。




うん、キレイになってたよ。髪をおろして、軽くウェーブさせて・・で、僕が鎧の体だった頃に、元の体に戻ったら、一緒にシャーロットのアイスを食べようって約束してたって。そう聞いても、僕、全然ピンと来なくて。

僕が無邪気に「おいしかったです。ありがとうございます」って、お礼を言った時の、パニーニャさんの、なんとも言えない哀しそうな顔がね・・あの時は、その意味が分からなくて。ばかだね、ばかだよね、ホントに。

泣いてなんかないよ。
ただ、思い出したんだ・・一緒にアイスを食べようって約束した日のこと・・なのに、僕はもう、ごめんねって伝えることができなくて。いや、こっちの世界にいるのが嫌になった訳じゃないし、兄さんを追って来たことを後悔してる訳でもないよ。ただ、もし、もしも帰れたら・・パニーニャさんにも素敵な彼氏ができてるだろうけど、それでもいいから、もう一回、一緒に・・ちゃんと約束を果たしたいなって、ただ、それだけ・・ホントに、それだけ・・僕、泣いてないよ、泣いてないってば、泣いてなんか・・













FINE

SSは、ななかにさんへ捧ぐ
そして、素敵な挿絵、ありがとうございました。

【後書き】「アルフォンス×パニーニャが見たい」という、ななかにさんのリクエストに応えて、書かせて頂きました。
この短くて拙いSSを思いのほか喜んで頂き、ななかにさんのサイトに収録して頂いた上に、素敵なイラストまで書いてもらいました。本当にありがとうございます。

ちなみに「シャーロットのアイスクリーム」というのは、私がでっちあげたもので、実在しませんし、鋼界にも存在しません。イメージはCHARAの『シャーロットの贈り物』で、私の小説には、しばしば登場させて頂いています。
ブログ初出:2006年03月05日
サイト収録:同月27日

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