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■知的好奇心?■1


「リン・・・?あれ、いねーの?」

エドはぐるりと部屋の中を見渡したが、宿屋の部屋などそう広い訳がなく、この部屋の主がいないことは明らかだった。
「なんだよ、せっかく人が来てやったってのに・・・・」
約束などしていた訳ではない。
妙な縁が出来たシン国からの来訪者泊まってる安宿に気まぐれで訪ねてきたのはエドの方だ。
だがなんとなく肩すかしを食らった気がして、エドは不機嫌そうに眉をひそめつつ部屋の中をもう一度見渡した。

その視線が、ふとベッドサイドのテーブルの上で止まった・・・・・






「デ?話を聞こうじゃないカ。」
そう言うリンのいつもは笑っている目が、一瞬刺すようにすうっと細くなった気がして、エドは慌ててそっぽを向いた。
「・・・・だから・・・・」
そのまま目を合わさないように注意しながら語り始めた。
「たいした事じゃねえんだよ・・・・・その、ちょっと目に付いたからさ・・・・」
「ちょっと目についたラ人の物ヲ勝手にいじるのカ、おまえハ。」
ぴしゃりと言われてエドは亀の子のように首を竦めた。どうにも旗色が悪い。

誰もいない部屋でエドの目に止まったのは、サイドテーブルの上に置き去りにされた薬。
どんな薬かは知らないが、医学方面に長けた錬丹術の発達したシン国で作られた、いわば錬丹術の英知の結晶だ。
「だからっテ、よくマア判らないものを飲む気になったナ。」
呆れたようにリンが溜息をついた。
「だからそれは錬金術師としての知的好奇心ってやつで・・・・・」
えへへ・・・とリンの顔色を伺うように、エドは愛想笑いをした。一応悪いと思ってはいるらしい。

つまり、エドは置きっぱなしになっていたリンの薬を勝手にいじった挙げ句、口にした訳だ。
ずいぶん無鉄砲な行動にも思えるが、リンが何かの病気とはとても思えず、そのリンが服用してる薬となれば、これは病気を治す類の薬ではなく、何かの滋養強壮剤とか栄養剤のような物だろうとタカをくくっていたせいもある。

もちろんリンの言う通り、勝手に他人の物を触ったのはエドで、悪いのは自分だとそこら辺自覚してはいるが。
「・・・・でさ、これ・・・素女丹つったっけ?どうやったら元に戻るんだよ?」
心底困ったような、こっちを頼ってくるようなエドの表情は普段は滅多に見れないもので、そう思うとレアではあるが・・・・リンは考え込むように頬杖をついた。

さて、このいたずらっ子をどうしてくれよう?






居心地悪そうに部屋の中をさ迷っていたエドの視線が、リンの後ろに控えるランファンの所で何気なく止まった。
だがリンの忠実な家臣である少女の表情は仮面に隠されていて、伺うことは出来ない。
と、リンが手を一振りした。ランファンに席を外すようにと合図したらしい。ランファンは素早く姿を消してしまった。
これで二人きりになった訳だ。
「素女丹ってのはマア・・・・説明は必要ないよナ?効果は体で思い知っただロ?」
そう言ってニヤリと笑うリンはどうにも人が悪い。
「う・・・まあな・・・」
ニヤニヤと面白そうに自分を見ているリンの視線に、エドは居心地悪そうに身じろぎをした。
「しかしマア・・・・」
そう呟きながらリンは唐突にエドと向かい合って座っていたソファから立ち上がった。
「女になったって割りにハ、あんまり見た目変わらないノナ。」
そう言うが早いかエドに近寄ると、股間をむぎゅっと掴む。
「うぎゃああああぁぁぁぁあああ??!!」
突然の事にパニックを起こして叫ぶエドを押さえつけて、更に股間をまさぐる。
「オー、でも本当にナイんだナ。」
「何がだあ!!」
「何って・・・ナニに決まってるジャン♪」
がごん!
エドに思いっきり殴られて、リンが吹っ飛んだ。右手で無かっただけありがたいと思って貰いたい。

つまり・・・エドが口にした素女丹とは、簡単に言うと男を女に変えるシン国の秘薬である。

「そんな薬だって知ってたら絶対飲まなかったのに!」
「しょうがねえダロ、別に俺が一服盛った訳じゃネエシ。勝手に飲んだオマエがわるいんだからナ。」
他の薬は木っ端や石ころのようにしか見えなかったが、これだけ瓢箪に入っていて飲みやすそうだったというのも、飲んでしまった一因。
「大体なんでこんな薬持ってるんだよ?!」
「実家からの仕送りの中ニ間違っテ入ってたんダヨ。」
「そもそもなんだってこんなアホな薬が存在するんだよ!人を馬鹿にしてるにもほどがあるってもんだろ!」
「それハその薬を作っタ錬丹術師の知的好奇心ってやつダロ?」
作れるという確信があったら試さずにはいられない。術師ならそれはしょうがない事かも知れない。
こんな薬を作ろうと思った経緯については知らないが、その気持ちは錬金術師として、エドのも判らなくはない。

・・・・・でもだからって、こんなの認められるか!!





「・・・・・で、元に戻れるのかよ?これ。」
恐る恐るエドがリンに尋ねる。確かに本人にとっては重要な問題ではある。
「マア元々未完成品らしいかラ、薬の効果がキレレバ戻れるダロ。」
「あ、なんだ、そうかよ。」
リンの言葉にエドはあからさまにほっとした顔になった。
そうなるといじめてみたくなるのは人情だ。
「でもなんせ未完成品ダシ、個人によっても差があるだろうしナア・・・・エドの場合どれくらいカカルだろうナ?1日か1週間か1か月か1年カ・・・」
あるいは一生ってことモありえるかもナ、とリンは言った。
「お、おい、恐いこと言うなよ。」
怯えたような表情になったエドを見て、リンがクックと笑う。
「冗談ダ、俺は専門家じゃないケド、まあもっても3日ってとこだろうナ。」
そう言ってリンは改めてまじまじとエドの姿を見つめた。
「な、なんだよ。」
見つめられてエドは思わず後ずさろうとするが、ソファの背もたれに阻まれる。
「ん・・・本当に見た目アンマリ変わんねえナと思っテ。」
口に出して言えば怒るだろうが、エドは元々小柄でどちらかと言うと細身な体つきだ。
細く見えても意外に筋肉がついていることは知っているが、こうやって見ると女になったと言われてもパっと見た感じには普段と違いはない。
よく見るとなるほど、かすかに胸がふくらんでいるようだが、上着でも着たらまず気が付く人はいないだろう。
「エドって乳ねぇナ。」
「殴られてぇのか。」
馬鹿にされたような気がして、エドはリンを睨む。
「巨乳のが良かっタ?あ、そうカ、オマエ巨乳好きだもんナ。」
「自分がなっても嬉しくねえよ。」
「オレは乳ハ小さいほうガ好きだけどナ。丁度こんな、手の平に収まるくらいのヤツv」
そう言うリンの手つきが、妙にリアルで・・・・・やらしい。
「余計嬉しくねえ・・・」
エドは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「サテ、と・・・・」
話が一段落すると、おもむろにリンが立ち上がった。
「今度ハ俺の知的好奇心を満足させて貰おうカナ。」
にんまり笑ってそう言うと、リンはいきなりエドの体を抱え上げた。
「うわ、何すんだ!!」
「見た目変わらネエからナア。どのくらい女になってるカ、確認してやろうと思っテv」
「いい、そんなもん確認しなくていい!!」
じたばたと暴れるエドを荷物のように肩に担ぎ上げると、空いた片手でエドの尻を撫で回す。
「フーン?やっぱりいつもヨリちょっと丸っこい感じカナ?それに柔らかイv」
「やめろ、触んな!気色わるい!!」
ポカポカと頭や背中をエドが殴るのも構わずに、リンは足をベッドの方に向けた。
リンは元々逃すなんて、そんなもったいない事するつもりは毛頭無かった。
「心配すんナ、エドの処女は俺が貰ってやるヨ♪」
「そんなの知的好奇心じゃねえ!ただの性欲だ!!」
リンの言葉に、やっと事態を察したエドが青くなって叫ぶ。
だがリンはそうとも言うナと涼しい顔だ。
「それに、他人の物を勝手に触るような悪い子は、お仕置きしないとナァ?」
エドはまだじたばたと暴れて抵抗していたが、宿屋のさほど広くもない部屋の中では、ベッドなどほんの数歩先だった。






ベッドに放り出されるようにして下ろされると同時に、息を付く間もなく唇を奪われた。
「ン・・・・ンン・・・・」
押しのけようとする手をかいくぐるように、リンの手が服の上から胸に触れる。
「ンー、丁度いいサイズ。俺、これくらいガ好きだナv」
エドの唇を解放したリンが、感触を確かめながら嬉しそうに言う。
「バッカ、何言ってんだ!離せ!!」
自分を組み敷いてるリンに、エドは躍起になって叫ぶが、その体がリンの手の動きに合わせるようにビクンと跳ねた。
「ア、感じル?乳首、固くなってきたヨ。まあ元々エドはココが弱いもんナ。」
リンがエドの胸の突起を探り当てて、指で軽く摘むとこりこりとマッサージするように転がし始める。
「いちいち言うな、馬鹿野郎!」
言い返す強気な口調とは逆に、エドの呼吸はあからさまに速くなってくる。
黒いシャツの上からでもそれと判るくらいプクンと尖り始めた部分を、リンが指の腹でそっと撫でる。
とたんにエドはひゅっと息を飲むと、体を硬直させた。
『・・・・なんか変だ・・・・いつもと違う・・・・?』
リンの愛撫を避けようとしつこく手を振り回しながら、頭の中に疑問が浮かぶ。
こうやってリンに愛撫されるのは実は初めてではない。
それなのにいくら体がいつもと違うと言っても、敏感になりすぎてる気がする。
「そんなに嫌がるなッテ。房中術の奥義、教えてやるヨ。」
そう言うリンの表情はいつもの捕らえどころのない笑顔と違って、あからさまに人の悪い笑顔で・・・・・エドは全身の素肌が粟立つのを感じた。




「ん・・・・・はぁ・・・・」
エドが熱くとろけるような溜息をついた。
「服の上から触られてるなんテ思えないクライ感じるダロ?」
す・・・とリンが手を動かすと、エドの体が引きつったようにピクリと反応した。
「房中術ってのハ陰陽術とか気孔術の一種みたいなもんなんだけどナ。俺から気を流し込むんならやっぱ器は女の体のほうガいいんだヨ。陰と陽で気の交換がしやすイ。」
そう説明するリンの声は冷静だった。まるで学問の講釈でもしているようだ。
まあシン国では・・・というか王族にとっては寝台の上での交わりすら王としての勤めなのだから。
国を安定させ、繁栄させるためには少数民族の集まるシン国では、皇帝は各部族から首長の娘を後宮へ迎え入れ、子を成す事は当然の義務。
そして帝王学の一環として、リンも然るべき年齢に達すると同時にそれに関する知識も技術も教え込まれている。

リンの講釈を聞きながら、ということは女の体がリンの気にいつもより反応してるわけか・・・と、霞がかった頭の隅でどこか他人事のように分析したのは癖のようなものか、それとも女の体だと言われても未だに実感が沸かないからなのか。
しかし、そんなエドの心とは別に、体は素直にリンの愛撫に反応してゆく。だがそれはまだエドの中では自分の感覚として一致していなかった。
だからだろう、服の上からの愛撫に飽きたリンがエドのシャツをたくし上げようとした時に、エドが抵抗するようにリンの腕を掴んだのは。
「ヘエ・・・まだそんな気力あるんダ。もう体の力抜けちまってルくせニ。」
リンは自分の腕を掴んでいるエドの手を、丁寧に解すようにゆっくりと腕から引き離す。
認めたくないがその通りだから、エドとしてはリンを睨むしか出来ない。
いつも以上に優しい、いっそねちっこいと言ってもいいほどの愛撫に、体はとっくにとろけきっている。
掴んでいるだけでも精一杯だった腕は、簡単に外された。
「そう睨むなっテ。大人しくしてロ、すぐ気持ちよくなるカラ。」
子供をあやすようにエドの耳元でそう囁くと、リンは改めてエドのシャツをたくし上げた。
なだらかな丘のように僅かに膨らんだ乳房がプルンと震えるように軽く揺れてリンの目の前に姿を現した。
『やっぱこれくらいが丁度いいな、俺好みv』
リンは密かににんまりと笑うと、その先端の粒の周りをゆっくりと指先で撫でる。
「んん・・・・ふぁ・・・・や・・・・ぁんっ」
なんとか声をこらえようとするが、上手くいかないらしく、エドの口から艶めいた声が僅かに漏れ始める。
「何これ・・・・いつもと・・・・なんか違・・・・・んんっ!」
「わかル?」
手は休めずに、リンは呑気な声で言った。
「今触ってるのは乳首よりもむしろ乳腺・・・おっぱいの線ネ。ここ、マッサージされると感じるダロ?」
きゅ・・・と指先に力を込める。
「あぁ!・・・リン、やめ・・・・」
制止しようとするエドの声が、途中で快感に溺れる声に変わっていった。



続く
初出:2006年02月10日

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