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ふたりでおるすばん



「いや、明日ダブリスでさ、ゴッズモデルの最新型の展示会があるんだってよ。で、ウィンリィがそれを見に行きたいって・・ほっとけば数カ月で全国点々として最後にゃラッシュバレーに帰ってくるっつーのに、1日でも早く見たいからって・・そんで、俺達に一緒に行かないかって言ってよ、俺はめんどくせーからヤダって言ったんだけど、アルがダブリスなら師匠に逢ってくるとか言って・・片道1日かかるんだぜ?」

エドに歯切れ悪く説明されても、リンには、ゴッズモデルがナニモノなのか、ダブリスがどこで、サイシンガタノテンジカイというのが何を指しているのか、知らない単語が多くてキョトンとするしかない。ただ、今晩はアルが居ないらしい、というのはなんとなく理解できた。

「・・デ? 俺、ナンデ、エドのホテルに呼び出されたワケ?」

「えっ? いや、その・・俺ずっとアルと一緒だったろ? ほとんど離れてたことってなくてさ・・その・・」

でも・・まだ陽が高いじゃないか、とリンは思う。
アルが出て行ってしまって、さっそく寂しくなったのだろうか。それはちょっと嬉しい。だが、それを素直に喜べないあたりが、後から割り込んだリンの立場の悲しいところだ。

「デ? 昼間は俺と遊んで、夜ハ大佐と一緒トカ?」

「そっ・・そんなことねーよ・・大佐は呼んでないぜ」

「でも、アイツともまだ付き合ってるンだロ? 本命ハどっちダヨ」

どうせ本命が“大佐”なのは分かっている筈のに、エドはわざわざ「へへ・・・ナイショ」などと笑う。そして、その無邪気な笑みを見ているうちに、リンも「いや、本当はまだ自分にもチャンスがあるのではないか」と、ついついそんな都合の良い解釈をしてしまいそうになる。

「内緒っテ・・そんな思わせブリなこと言っちゃっテ、コイツぅ」

そう言って小突くと、エドはさらに「どっちが本命かなんてリン次第なんだけどなあ・・・」などと、上目遣いで見上げてくる。

「エッ俺次第? 同じ台詞、大佐ニモ言ってルんじゃネーだろうナァ・・俺はエド好きダヨ。決まってンジャン! シン国帰る時も、連れて行きタイぐらい、離れたくネーヨ? そんなんジャ、足りない?」

「大佐は積極的だよぉ。俺、いつも押し倒されそうでさ」

「ナンダトぉ! クッソォ、エロ大佐メッ! こっちは一応、手順をフモーと思って、ダナァ・・物事には順序トイウモノガ・・エエイ! 今度、お仕置きに押し倒してヤルッ!」

逆上したリンがそんなことを口走ると、エドがプッと吹き出した。リンに襲われてオタオタするロイを想像したのかもしれない。だが、ふと何かを思いついて、顔を赤らめた。

「え〜、大佐の事はいいからさ、押し倒すんならオレにしてくんないかな」

そう言いながら、そっとリンの首に手を回す。リンがゴクッと生つばを飲み込んだのが、ダイレクトに伝わって来た。







「ン? ナーンカ誤魔化されたヨーナ気がするケド・・マァ、いいヤ」とつぶやいたリンは、ソファに座った自分の腿を叩いて、その上に座るよう促し、エドがちょこんとそこに尻を載せる。

「イイの? 押し倒してなんて可愛いことイッタラ、ホントーにヤっちゃうよ?」

そう言ってエドの目を覗き込んでも、エドは目を逸らさずに逆に、じっとこちらを覗き込んでくる。これは・・据え膳というやつだ。食わねば男がすたる・・だが・・実はリンは・・いや、まぁ、この際気にしないでおこう、とリンは腹を括った。
エドから積極的に誘ってくるなんて、こんなチャンスは滅多にない。嬉しいがどうしたんだろう、とリンは訝しがる。

昨夜のディナーで、精がつきそうな妙なモン・・山芋だとかオクラだとか白子だとかレバーだとかウナギだとか、スッポン、イモリの黒焼きはたまたマムシドリンク・・そんなもんを食べてしまって、ムラムラしているとか・・いちいち、そんな裏があるんじゃないかと疑ってしまう自分の性格が虚しい。
リンはエドの髪を撫で、それから手を滑らせて肩、背中と全身のシルエットをなぞりながら、理由はさておき、今、エドがかわいくねだって来ているということが重要なんだ・・と納得することにした。

「やだなあ、そんなとこ撫でるなよ、オレ変な気になっちゃうだろ・・・?」

「ナニ? ヘンナ気ッてドンナ気? ココは撫でちゃダメなのネ。フーン。ジャァ、ここハ? それともコッチならイイ? エドが一番キモチイイとこ教えてヨ。それとモ・・舐める方が好キ?」

「あ、こら、そんなにあちこち触んなよな」

口ではそんなことを言って嫌がりながらも、エドが抱きついてくる。
ここまでしておいて「いや、実はドッキリでした」とか「冗談でした、そんなつもりはありませんでした」という言い訳はきかない。

「ナーニそれ? 誘ってるノ? 嫌がってるノ? ドッチ?なんならベッド行く? まだ明るいケド、明るイ方がエドの可愛い顔見れるカラネ」

「誘ってるんだから分かれよ・・・言わせるなよな、こんなこと。明るい方がいいって・・・カーテン閉めるに決まってるだろ!」

「ナァンダ、誘ってたノネ。素直に言ってクレなきゃ、ワカラナイでショ? 俺はただ単に体ガ欲しいんじゃネーノ。エドの心もゼーンブ欲しいノ。だからサ、エドがイヤな時に無理にはシたくネーノ。分かル?」

これはもう・・鴨がネギ背負って、鍋用意して自分で醤油かぶってお箸まで用意している状態に違いない。もしかして、これは夢なのか・・夢なら覚める前に美味しく頂いておかないと損だ。
「禍福は糾える縄のごとし」という不吉な諺が脳裏を過ったが、それは爽やかにスルーして、エドを抱き上げる。
リンの腕力は、ある理由でいつもよりも弱い状態だったのだが、そこは気合いでカバーした。

「あんだよ今更・・心はもうオマエのものだって、分かってたんじゃねえのかよ、どんかん」

「フフ・・分かってテモ、エドの口から直接ハッキリ聞きたインダ。ダッテそーダロ? あの大佐ともコーやってジャレてんダロ? マァ、心がオレのモンだって、エドが言うンナラ、俺もソーいうつもりでサせてもらうケドヨ?」

ドサッと取り落としてしまいそうになるのを堪えながら、できるだけゆっくりと抱きおろす。ベッドのスプリングが、ふたり分の体重を受けて小さく鳴った。
そのエドの横に自分も腰を下ろし、覆いかぶさるような姿勢になる。片腕で己の身体を支えながら、もう片手はエドの身体の上を滑らせた。
カーテン閉めなきゃな、と思っていたが、エドの体臭を肺いっぱいに吸い込んで、その体温を感じているうちに、忘れてしまった。一方、閉めろと言っていたエド自身も、そんなことは忘れてしまったかのように、煌々と照る昼下がりの陽光の下、うっとりした表情でリンの愛撫に身を任せている。

「別に大佐とは・・そんなんじゃねーよ、つか、オマエこういうとき、結構よく喋るよな・・もしかして焦らしてんのか?」

「フーン、焦れてんノ? それともコーイウノ、黙って黙々とヤる方が好きな訳? 俺ハ、エドの声聞いてルのがタノシーんダケド? 大丈夫、喋っててモ、手はチャーンと動いてマスって」

「別に黙々とやる方がいいって訳じゃ・・オレはただカンケーない話すんなって・・あっ、ちょ・・どこ触ってんだよ」

「ドコって・・自分のカラダでショ?ドコ触られてルか、ワカラナイぐらい感じタ? ・・それトモここはイヤだったのカナ? ドコなら触ってイイの? エドが一番感じるトコ、ドコ? リクエスト聞くヨー」

「リクエストって・・・そんなの言えるかよ!」

真っ赤になってエドが喚き、リンは思わず吹き出してしまった。

「アレ? リクエストないノ? ジャ、俺のスキなヨーにヤっちゃうヨ。イイんだネ? ジャア、いったダキまース。とりあえズ、三つ編みはホドかせテネ。あ、シャツは脱がなくテいいヨ、半裸でハダけてル方がカワイイし・・」

「髪はほどくとか半裸の方がいいとか・・・オマエ結構マニアックだな?」

リンに髪の結び紐を解かれながら、エドがリンの性癖に呆れたような視線を投げかける。

「マニアックって言うノハ、相手が誰でもソレなら興奮すルって性癖のコトだロ。俺の場合は、誰でもイーンじゃネーの。エドのイイとこを引き出すニハ、コレが一番だって思うカラ、すんノ。ふふ、カワイーヨ」

「かわいいとか言うなよ・・じゃあもっとリンのこと感じさせて?」

そして、エドから抱き寄せてキスを仕掛けて来た・・が、そこでリンの身体の異変に気付いてしまう。道理で今日は珍しくシャツをはだけさせずにきちんとボタンを留めて着ていたわけだ。抱き上げられたりしていたわけだから、もっと早く気付いても良かったのだろうが、それまではエドものぼせて、多少冷静さを失っていたわけで。
リンのシャツの襟元にしがみつく予定だった右手は、大きくて弾力のある柔らかいものに触れていたのだ。
リンはエドがフリーズしたのに気付き、その理由まで知って慌てた。

「ゲッ、胸ペタペタさわんナヨ! せっかく、バレないヨーに脱がないデシヨーとか、色々考えてタのニ!」






・・つまり、そういうこと。
リンは以前、故郷から仕送りを届けて貰ったのだが、その中に「素女丹」なる男女が入れ替わる薬が紛れ込んでいたことがあって・・それがまだ少し残っていて、今朝、別の薬を飲もうとしたときに、間違えて飲んでしまったのであった。放っておけば、そのうちに元に戻るのだそうな。

「じゃ・・その、どーする?」

だから、エドとベッドインするのはそれまで待っても良かったのだが・・気まぐれなエドのこと、その気になったときにシておかないと、次はいつあるか分からない。

「ダイジョブ、大丈夫、コノ身体でモ、チャンとイかせてヤッから。エドはなーにモしなくてイイヨ。ただ、感じてテくれタラ・・」

「えー、なんにもしなくていいの? なんなら体勢入れ替えてもいいぞ?」

「コラコラ、起き上がるナヨ・・このままの体勢デイイんだかラ。ハイハイ、寝て寝て・・ダカラ、俺のシャツなんて、めくんなくテいいってバ。あーモウ、暴れるナヨ。しゃぶってやっタラ、少しはおとなしくヤらせてクレルかナ?」

「えー? まあリンならオレ受けでも攻めでもどっちでもいいけどさ・・あ、でもその胸しゃぶってみたいなあ・・・結構、巨乳」

そして、女になっていたことを隠しておきたかったもうひとつの理由は、このエドのおっぱい好きだったりする。

「ダーカーラー! 俺のはシなくテイーんダってバ! コラコラッ、聞いてンのカ? 吸い付くナッてバ! くすぐったイッて」

リンが、赤面しながら身体を引き剥がす。エドの唇から、乳首がチュポン、という音を立てて離れ、リンの乳房が揺れた。リンはめくられたシャツを引っ張り下ろすと胸を隠し、エドは小さく「ちぇーっ」とつぶやく。

「・・もゥ。要らんコトしぃだなぁ、エドは。悪いことスル手は縛っちゃうヨ?」

「え〜? 実は結構感じてたんじゃねぇの?」

「ンな・・感じネェヨ」

シャツの裾をしっかりとズボンに突っ込むと、照れ隠しなのか、わざとぞんざいな口調で「ホレ、しゃぶってヤっから下、脱ぎナ」などと言う。

「オイ、横着スンナヨ。あのナ、一国の皇子にパンツ脱がせテもらおうッテ、ネェ・・おまえってバ、ホントに・・もう」

「脱げとかそんなストレートな言い方されたら照れるじゃねぇか・・・ったく、結構ムードねぇ奴だよな、オマエって」

エドもプイッと横を向いてしまう。ここでケンカしては元も子もない。

「悪イ悪イ・・エドのアレとご対面ダト思うと、ナンカどきどきしテ余裕なくナッテきちまっテ・・ネ。ゴメンゴメン、でも拗ねた顔もカワイーヨ。機嫌直しテこっち向いて・・キスしてアゲルカラサ」

「脱げとか言ったり突然優しかったりオマエって・・・まあそんなとこも好きなんだけどさ・・キスしてくれたら許す・・・って、あ、耳元はヤメロよ」

まぁ、機嫌は直ってくれた・・かな? リンはふぅと息をつく。膨れていたエドが、ようやくニコッと笑ったのを見て、どっと疲れた気がした。





「ノドかわいタ・・ちょっと休んデ、ジュースでも飲ム? 口移しがイイ?」

そう言いながら、リンがベッドから降りる。
実際、いざというときになって緊張したのか、喉がカラカラで、口腔は唾も出ない状態だったのだ。一方、取り残された形のエドは「え〜、もう休憩? 焦らすだけ焦らせたくせに・・・」と、不満げに鼻を鳴らしている。
リンは素足でペタペタと歩いて・・もう、勝手知ったるなんとやらで、ホテル備え付けの小型冷蔵庫を開けて、オレンジジュースの缶を取り出した。それを口に含んだ瞬間、

「口移しじゃなきゃヤダ」

などとエドが言う。その唐突な言葉に、リンがジュースを吹き出し、むせて咳き込んだ。だが、エドの方は、それを狙っていた訳ではないらしく、そのリンの反応を笑うこともなく、ただひたすら途惑った表情をしていた。

「口移しじゃナキャ、ヤダって・・そっちこそストレート過ぎダヨ、マッタク」

そう照れくさそうにぼやいて、リンが口を尖らせる。ジュースで濡れたシャツの前みごろをつまんで、いっそ脱いでしまおうか、いや脱いだらエドがまたおっぱい見てはしゃくだろうから、どうしようか・・と迷う。
冷蔵庫の上に雑巾が載せてあったのに気付き、それでパタパタと胸元を叩くように拭って済ませることにした。床は・・後で清掃従業員でも呼んでもらえばいいか。

リンは動揺を押し隠すように深呼吸すると、ベッドに戻り、あらためてジュースを口に含んだ。心配そうに見上げていたエドを、ちょいちょいと手招きすると、意図を察したのか、体を起こして上体を寄せてきた。そのあごを取って唇を重ね、口の中のジュースを流し込んでやる。エドの喉がこくこくと動いて飲み下した後も、なおも貪るように互いの唇を吸い、舌を絡めあう。

「ンーッ。オイシイ?」

「ん・・オイシイ。もっと・・」

リンの腕の中で、エドはうっとりと熱を帯びた瞳をリンに向けていた。それに気付いたリンはドキッ・・を通り越してギョッとしてしまった。

「うワ、そんなコト言って、上目遣いしちゃっテ、コイツ・・オマエ絶対、間違ってル。俺ナンカよか、オマエが女になった方がズーっとヨカッタ・・色っぽいナァ。鼻血出ソー・・」

などと口走りながら、思わず見とれ・・やがて、エドの責めるような視線に気付いて、我に返りった。

「ああ、お代わり、要るンだっけカ?」

「え〜? 俺なんか、色っぽいか? そんなこといいから、もっとおかわりくれよ・・・つか、もっとキスしようぜ?」

「もっとキスしようぜって・・オマエ、なんか妙にガッついてナイカ? どーしタ? 飢えテンノカ?」

照れ隠しのようにわざと乱暴に言いながら、男がするように、リンがエドの腿にまたがる。エドもあどけない少女のように、くすくすと笑いながら「がっついてるって? オマエが焦らすからだろぉ・・・ほら、余所見すんなよ」と囁き、リンの首に腕を絡ませる。





そして、ふたりの体がゆっくりとシーツに沈んでいった。

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【後書き】『ときめき☆フルメタル』という個人運営のコミュニケーション系ゲームに参加し、その表向きのストーリーは、更新日記には『ときフル★香蘭日記』として正規版を、mixiの方には簡易版を掲載しているのですが・・その“裏”では『なりきりチャット』ならぬ『なりきりメール』が横行してまして(苦笑)。
私もこのたび、表では恋人でもなんでもないエド(家小田様)相手に、裏ではいちゃいちゃさせていただきました。

そんで「おーっ、ピュアだぁ! これぞリン×エドだよ、おい、初々しいじゃねーか畜生! 可愛いぜ、くーっ!いちゃいちゃすんじゃねーよ、バカッ(はあと)」と萌えに萌え、これを埋もれさせるのは惜しいナァと・・思って、その会話を小説の形にリライト。当サイトへの掲載をお許し頂いたという次第です。

ちなみに、最初は攻めキャラ同士だったんですが、なぜか(というかメールを裏でのんびりと交していたら、表のストーリーが怒涛のように展開してしまい)張回リンが受けキャラに転換する羽目になって・・おかげで、裏でも途中からリンが女になっちゃいました(苦笑)。仕方ないので「実は女体化してたんだけど、それを隠してた」とこじつけ。

リンの台詞は私、エドは家小田様が担当。地の文は(シチュエーションも込みで)私が捏造したものです。帝斗の男脳からは、いくら絞っても出てこないようなプリティでキュートなエドの台詞を、皆様にご堪能いただけたのなら、幸いです。
初出:2005年10月28日

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