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Mayfly〜もうひとつの Other Eden



※当ストーリーは、既出の『Other Eden』『連環〜Chain』の設定を下敷きにしています。前もって白状すると、ロイはアメストリス国の伍長ではなく、香港でリン(女体)と結婚している別人(ムスタング氏)です。
先に両作品をお読み頂くか、細かいことは気にせず、ひたすらハイデとロイがいちゃいちゃする姿を妄想してハァハァすると、腹を括ってお楽しみください。
準備はよろしいですか? では、以下スクロールしてご覧ください。







相変わらず自分はお人好しだなと思うが、困っている人間を放置できるほど冷酷にもなれない。
突き放せたらいいのにな・・だが、ここで自分が手を離してしまうと、この人は殺されてしまうかもしれない。
いや、彼を自分の部屋に匿おうと考えたのは、ただそれだけの理由だったのだろうか?

白い肌に漆黒の髪の、多分自分よりもずっと年上の男の端整な顔、切れ長の目を眺めながら、アルフォンス・ハイデリヒはぼんやりとそう自問していた。

『ミュンヘン・・だと? まさか。私はカイロにいた筈・・』

ぱりっとした教科書のような発音の英語は、ドイツ人の自分にも聞き取りやすい。

『この服、着替えて、ください。軍服は・・目立つ』

アルフォンスが話す拙い英語を聞いて、男はここがドイツ領であることを思い出したらしい。

「どうもありがとう」

ドイツ語で礼を言い、にこっと微笑む。彼はドイツ語も丁寧な発音で、アルフォンスはその澄んだテノールの声になぜかどぎまぎする。こんな気持ちになったのは・・初めてのことだった。

「その・・英語でもいいんですよ?」

「いや、ドイツ語でかまわんよ」

話題が途切れた一瞬の沈黙に、アルフォンスの胸が締め付けられるように痛んだ。
それは・・肺病の痛みとは違う甘い痛みだ。アルフォンスは無意識のうちに、片手を心臓に押し当てていた。頭の中が真っ白になりかけて、必死で言葉の接ぎ穂を探す。

「あの・・僕・・その・・これから少し、用事があるから出かけますけど、その間・・休まれたらいいと思います。僕のベッドを使ってください。多分、疲れて記憶が混乱しているだけじゃないでしょうか。しばらくしたら、どうしてあそこに倒れていたかも思い出せるかも」

「なるほど。そうかもしれんな・・そうさせてもらうよ」

だが、彼は受け取った服を手にしたまま、気まずそうに佇んだままだ。

「あ・・ごめんなんさい。僕がここに居たら、着替えできませんよね・・すぐ出ますから」

アルフォンスは気付いて、耳まで赤く染めていた。
そして、俯きながら「名前を・・僕、あなたの名前を聞いていませんでしたよね?」と、小声で尋ねる。

「僕は・・アルフォンス・ハイデリヒ・・と言います」

「私はロイだ。ロイ・ムスタング」

「ロイさん・・と呼んでも良いですか?」

「ロイでいいよ」

その言葉を聞いたアルフォンスは、居たたまれなくなって、思わずその部屋を飛び出してしまった。





下宿を出て、数軒向こうの辻まで走り出て、アルフォンスはようやく我に返った。
幸い、家主のグレイシアは買い物にでも行っていたらしく、アルフォンスが男を連れ込んだことを気付かれた様子はなかった・・多分、状況からして彼は脱走兵扱いになっているだろうし、例えそうでなくとも、ドイツを貶めた敵国の人間だというだけで私刑に遭いかねない。いずれにせよ、あまり人目に晒さない方がいいに違いないのは、確かだ。

今日は、デモンストレーションに使う小型ロケットの設計コンセプトを、皆で持ち寄って検討する予定なのだが・・できるだけ早く帰ってこよう。そんなに急ぐプロジェクトでもないのだから、体調が悪いとでも言って・・それよりも設計図・・持ってくるのを忘れてしまっている。でも、まだ仕上がってないと言えばいいか・・そんなことを考えながら、オーベルト氏のロケット研究所に向かう石畳の街道を歩く。

「よう、アルフォンス!」

大声で呼びかけられ、アルフォンスは思わず首をすくめた。
背後からパタンカツンパタンコツンと、不揃いな足音が近寄ってくる。軽く息を弾ませながら回り込んできて、子犬のような目で見上げてきたのは・・エドワード・エルリックであった。

「研究所に行くんだろ?」

「ああ、まぁ、一応ね」

「俺も研究所に行くところでさ。ロケットの設計図は引けないけど、推進力の計算ぐらいはできるんだぜ? ドルチェットに誘われてさ、書いてみたんだ」

「エドワードさんが?」

エドワードが得意そうに、手に提げていた革製の書類ケースを示して、パンと叩いてみせる。
ドルチェットめ、余計なことを・・と一瞬罵りかけるが「最近、エドワードさんの元気がないから、なにか声をかけてやってくれないか」と数日前に、ロケット研究の仲間に頼んだのが、自分自身だったことを思い出した。

「こっちの世界とあっちの世界では、やっぱり少し物理的法則が違うみたいでさ、重力値もこっちの方が少し強いみたいだな。こっちの世界じゃちゃんと数式化されてないみたいで、正確な値を算出するだけで、結構苦労してさ。だから空気抵抗も若干、大きめに仮定して・・なぁ、聞いてる?」

「ああ、ごめん、ちょっと・・具合が・・ね」

「へぇ? その割には顔色はマシみたいだけど」

エドワードに顔を覗き込まれたアルフォンスは、苦笑いしながら片手で払うようなしぐさをしていた。

「でも、アルフォンス・・研究所に行くにしては、手ぶらなんだな」

「うん、だから、具合が悪くて仕上がらなかったから、謝りにいこうと思って」

「そっか。じゃあ、帰ったら俺が看病してやろうか?」

「看病なんて、大袈裟だなぁ。いいよ、ひとりで寝ていれば治るから」

「そっか?」

エドワードはアルフォンスを見上げて、なぜか腑に落ちない様子であった。
どこがおかしいとか、具体的には分からないが、いつもと雰囲気が違う気がするし、目を合わせていても別の場所を見ているような感じがする。いくら声をかけても、薄い膜がかかったようにぼんやりしていて。

「なぁ・・何考えているんだ? アルフォンス?」

「あ? いや、別に・・何でもないよ」

にっこりと、いつもと同じ表情を作って笑ってくれるが、どこかうすら寒い。

「アルフォンス・・あのさ、考えたんだけど、やっぱ俺、グレイシアさんの下宿の方に移ろうかな」

「えっ? なんだって?」

「だからぁ・・お前と一緒に暮らそうかなって思ったんだけど」

「お父さんは・・?」

「オヤジなんてもう、帰ってこねーよ。ま、家賃はかなり先の分まで入れてあるらしいから、荷物は置いておくけど・・お前んことが心配だからさ」

「僕?」

「お前のカラダんこと。やっぱ、調子悪そうだし・・一緒の宿に住んでいたら、お前の体調悪い時、みてやれるだろ?」

「いや、いいよ・・そんな」

「よくねーよ。親元出て下宿するって聞いた時から、心配だったんだ。俺の荷物だけだったら少ないからさ、今日にでもグレイシアさんに頼んで・・」

「・・来ないでくれ!」

思いがけず、大声が出た。
エドワードはもちろん、アルフォンス自身も驚いてしまった。思わず口を抑えて見回すと、周囲の人々が皆、こちらを振り向いている。アルフォンスは赤面して、エドワードの手を掴むと駆け出した。

「わっ・・ちょっ・・アルフォンスッ!」

不自由な義足に、エドワードが転びそうになって悲鳴をあげるが、その前にアルフォンスがヘバってしまった。
めちゃくちゃに走って狭い路地に入ったところで立ち止まり、膝を掴むように上体を折った姿勢でぜいぜいと喉を鳴らす。

「ア・・アルフォンス、大丈夫か?」

「ごめん、エドワードさん・・その、今日は・・ダメだ。そんな急には・・」

「なんで・・いや、いいよ。分かった、分かったよ。ごめんな、アルフォンス」

アルフォンスが、薄汚れてひび割れているタイルの壁にもたれて呼吸を整えるのを、エドワードは心配そうに見守っていた。こんなとき、エドワードは彼に何もしてやれない。出会ったばかりの頃は背中をさすってみたりしたものだが、いくらさすっても楽になるどころか、かえって鬱陶しいらしいと知って、手が出せなくなった。できるのは、ただ、待つことだけ。

「雨・・降りそうだね。早く行かなくちゃ。皆が待ってるね」

やがて、アルフォンスがポツリとそう呟く。
エドワードは「そうだな」と相槌を打って生身の左手を差し出したが、アルフォンスはその手を借りずに体を起こした。






しきりに部屋まで送り届けようとするエドワードを、強引に振りきってアルフォンスは下宿に戻った。
部屋のノブに手を触れながら、あんなに唐突に部屋を飛び出してしまって、どう思われたろう・・ということが脳裏をよぎり、思わず手が震えてしまう。

ヘンに思われたのではないだろうか? 嫌われてしまったのではないだろうか?
そして、もう・・部屋を出ていってしまったのではないだろうか?

だが、階下にグレイシアらしい気配を感じて、思いきってドアを開いた。いつまでも廊下でぐずぐずしていては、不審がられるに違いない。

「・・た、ただい・・ま・・」

声をかけながら、ベッドの方を見る。なぜか心臓が高鳴り、声が上ずって・・その声が不自然に思われたら恥ずかしい・・という思いが、ますますアルフォンスをギクシャクさせる。

「ああ、お帰り。本当に早かったね」

その人は・・ベッドの上に上体を起こした姿勢で、にこやかに微笑んで迎えてくれた。
窓は閉じてカーテンを閉めている・・外から姿を目撃されることを避けてのことだろう。本の類いを勝手に持ち出した形跡もない。そんな手癖の悪いことはしない人なのだろう・・エドワードをひとりで留守番させたら、どれだけ部屋中を引っ掻き回すことか。

「あの・・少しはお眠りになったんですか?」

「いや、あまり眠くならなくて。なにせ、倒れている間、かなり長いこと眠っていたようだからな」

「だったら、あの・・ずっと・・待っていてくれてたんですか?」

「まぁ、そうだな。そうなるね。途中で、ここの宿の女主人かな? 部屋をノックしてね。開けて入って来られたらと思うと、ちょっとヒヤヒヤしたよ」

アルフォンスは脱力して、ついにへたり込んでしまった。
ロイがベッドから降りて歩み寄り、大丈夫かと声を掛けながら、膝をついてアルフォンスの肩に手を乗せる。
その触れられた場所が、ちりちりと熱く感じられた。心臓の音が頭の中いっぱいに鳴り響き、アルフォンスの視界がぐらんぐらんと揺れる。

思わず・・抱きついてしまっていた。

「ア・・アルフォンス君?」

「あの・・すみません、その・・ごめんなさい・・なんか、僕、おかしい・・」

「君は、肺が悪いのかね?」

「えっ?」

確かに肺の病を患ってはいるが、唐突に投げかけられたその言葉にキョトンとしてしまう。

「いや、呼吸するたびに苦しそうだからね。それで具合が悪いのではないかと」

「あ・・そうじゃないんです。いえ、確かにおかしな咳はでますけど、伝染するものじゃないそうですし・・その、僕がおかしいっていうのは・・」

「顔が真っ赤だぞ。熱もあるのか? 雨に打たれたんだろう。私よりも君の方が、休む必要性がありそうだな」

ロイの片腕がアルフォンスの脚の下に滑り込む。その感触にぞくぞくっとした直後、そのままロイが立ち上がった。アルフォンスは・・自分と同じぐらいか、むしろ小柄かもしれない男に抱き上げられていたのだ。

「あっ・・ちょっ・・」

暴れる間もなく、ベッドにゆっくりと下ろされる。ロイが、己の首にまわされたアルフォンスの手を外そうと、軽くポンポンと叩いた。

「顔はこんなに真っ赤なのに、身体は冷たいようだな。ほら、眠るといい。私は・・そこの椅子にでも休ませてもらうよ。新聞があれば、あるだけ読ませてもらいたいんだが?」

「暖めて・・ください」

アルフォンスは、自分の声を他人事のように聞いていた。掠れた、どこか不自然にひきつった、うわごとのような声。

「あなたに・・暖めてもらいたい・・」

「はぁ?」

ロイはその意味が一瞬、理解できなかったようだが、アルフォンスはお構いなしに腕を外すどころか、力を込めて男の身体を引き寄せていた。






エジプトが大英帝国から独立したがっているらしい・・ということで、カイロに向かうように軍命が下りたのが、ほんの数日前のような気がする。なぜ香港在住のロイに白羽の矢が立ったのかは分からないが、狭いブリテン島に引きこもっている総司令本部の連中にとっては、香港もエジプトも「非欧州」という点で大した違いはないのだろう。
また戦争なノ? と不安がりながら送り出してくれた若い妻・・だが、聞けば記憶が途切れてから今日まで、1年以上の歳月が過ぎている。

自分は悪い夢でも見ているのではないだろうか?

眠って再び目を覚ませば、カイロに設置された仮司令部の粗末なパイプベッドか、香港の邸宅の天蓋つきベッドの中なのではなかろうか・・と思う。
「うなされてタヨ。昨日、食べすぎたかラジャナイ? ロイは、アタシと同じペースで食べタラ、駄目ダヨ」などと、舌足らずの発音で甘ったれた声を出しながら、妻がその細い指で額の汗を拭ってくれるのではないか、と。

だが、夢の中にしては、少年の腕の力は強く、その存在は確かだった。

「アルフォンス君?」

耳元に熱い息を吐きかけてくる少年の名を囁き、蛇のように首筋を巻きしめてくる腕を掴む。

「・・寒いのかね?」

「そんな・・もう、お分かりになっているくせに」

「すまないね、私は少々鈍いらしくて」

肘の関節に指を食い込ませて力を込めると、アルフォンスが小さく悲鳴を上げた。

「お分かりになっているくせに・・ひどいです」

痛めつけられた肘を抱え込んでうずくまり、目を潤ませて見上げてくる。アルフォンスの、その哀しげな表情を見下ろして、ロイは途方に暮れた。

「せっかく誘ってくれたのに申し訳ないが・・私は、その・・男の子を抱いたことがないんだよ」

だが、数秒の沈黙の後、アルフォンスがフッと表情を緩め、泣き笑いのような笑顔をつくっていた。

「せっかく誘ってくれたのに申し訳ないが・・ですか」

「ん・・単語の用法を間違えたかね?」

「ええ。少し、おかしいかも」

「君はその、そんな退廃的な趣味があるようには見えないのだがね」

「僕も、今までは男の人にこんな気持ちになったことなくって・・どうしていいのか分からないんです」

「参ったな。でも、とりあえず今は・・君は眠った方がいいと思うよ」

「ロイさん・・!」

ロイがため息をついて、天を仰いだ。そして、一転して子どもをあやすかのような口調で「いいから、眠りなさい・・キスぐらいなら、してあげるから」と囁く。

アルフォンスがこっくりと頷いて、引き込まれるように目を閉じた。
両肩をつかまれ、額に柔らかいものがそっと触れたのを感じ、全身がぞくぞくした。それだけで達してしまいそうなほどの、至福感・・そして、わななく唇にも掠めるようなキスをされる。

「僕・・あなたに、恋してしまったのかもしれない」

「・・おやすみ。私は、出ていかないから」

そのまま、そっと身体を倒されて、毛布をかけられてしまう。眠りたくなんかなかったが、気が抜けたのか、アルフォンスは猛烈な眠気を覚えていた。
重いまぶたをこじ開けるようにして室内を見回すと、ロイは椅子に腰掛けて、マガジンラック代わりにしているワイン箱から、新聞を何部か取り出して優雅に広げ始めていた。






お腹が空いたのを感じて、ふと目が覚めた。
あまり食欲旺盛な方ではないアルフォンスにしては珍しいことだが・・そして、夕食を食べ損ねていること、さらにはロイがまったく食事をしていないことに気がついて、跳ね起きた。

「あっ・・その、ごめんなさい・・僕・・っ」

「ああ、おはよう。体調はどうだね?」

ロイは新聞を読み尽くしたのか、椅子に腰掛けた状態でうつらうつらしていたようだ。それでもすぐに覚醒したのは、やはり軍人だからだろう。

「すみません。なんか、あの・・お食事とか全然、気が回らなくて・・しかも僕、のんきに寝こけてしまって・・お腹、空いたでしょう?」

「大声は出さない方がいい。もう、夜遅いからね」

ロイが立ち上がり、ベッドに歩み寄ると、アルフォンスの顔を覗き込んだ。

「おお、さっきよりは顔色が良いようだな」

一瞬キスを期待したアルフォンスは、自分の浅ましい妄想に耳まで真っ赤になってしまう。

「食事・・作って来ます。下の台所は自由に使って良いって、グレイシアさんに言われているんです。まだ日の高いうちなら、配給のスープを貰って来るという方法もあるだろうけど・・さすがにこの時間は、炊き出ししてないから」

「・・配給ね」

「い、いまは貧しいけど、ドイツは必ず復活しますよ! 大体、この貧困は、あなた方の国がヴェルサイユ条約で不当な賠償金の支払いを押し付けたからであって・・」

「そういう意味で言ったのではない。気に障ったのなら、謝る」

「あ・・ごめんなさい。そんなこと、あなたに言っても仕方ないことなんですよね」

「別に構わないよ。どの国であれ愛国的であるのは、結構なことだ」

「本当にごめんなさい・・あの・・スープとソーセージでいいですよね?」

僕、馬鹿だ・・あの人がイギリス軍人だって知っていて、それでも好きになってしまったくせに・・あんなことを言ってしまうだなんて、サイテーだ。

アルフォンスは部屋を出て、階段を小走りに駆け降りる。
台所に入ると、作業台の上に小さな紙切れが見えた。取り上げると、家主のグレイシアの几帳面な字で「お鍋にスープを作ってあります」と書かれていた。どうやらアルフォンスが食事に降りてこなかったので、気を使って用意しておいてくれたらしい。

アルフォンスはスープの準備をしながら、食糧庫から黒パンやらハムやらを取り出した。
ドイツ風の食事が、英国人の彼の口に合うのだろうかとふと不安になったが、今さら買い出しに行ける由もない。飲み物だって、ビールじゃなく本当は紅茶の方がいいだろうに・・オーベルト先生のところから帰る途中に市場があったのだから、紅茶ぐらい買えば良かったのに。なんて自分は迂闊なんだろう。

自己嫌悪で泣き出しそうになりながら、アルフォンスがトレイを抱えて部屋に戻る。
だが、ロイはけろりとした顔で迎え、スープから立ちのぼる甘い匂いを嗅いで「おお、うまそうだな」と呟いた。

「実は、腹がすいていたんだ」

「だったら、言ってくれれば良かったのに・・」

テーブルにクロスを広げ、皿やらナプキンやらを乗せる。
アルフォンスはふと、夫婦生活ってこんな感じなのかなと思いついてしまい、己の発想に動揺してフォークを取り落としていた。






食事を済ませ、階下の家主を起こさぬよう、こっそりと用を足す。

「私は、椅子で充分だよ」

「そんな・・狭いけどベッドを使ってくださいよ。その・・寝ている間にヘンなことをしたりはしませんから」

「別に、そういう心配をしているわけではないのだがね」

「だったら・・いいでしょう? それとも、一緒に寝たら僕の病気が伝染るとか思ってます? 確かに咳は出ますけど結核じゃありませんし、絶対伝染しませんから」

「ああ、そうじゃないんだが・・ええと、ベッドだと熟睡しすぎて、その、家主さんが部屋を覗きに来た時にとっさに隠れられないのではないかな、と」

「そんなこと・・だったら、内側から鍵をかけておきますから、そのへんはご心配なく。それに大体、ロケットの設計に取りかかっている間は、放っておいてくれるよう前々から頼んでありますから、そう無闇矢鱈に覗き込まれたりしませんよ」

押し問答の末、アルフォンスの主張が通った。
思えば・・昼間に路地裏で倒れていた彼を見つけて部屋に連れ込み、夕方には告白してキスして、夜は一緒のベッドに寝るだなんて・・今日はなんという一日なのだろう。なんだかめまいがしそうだった。

「・・ずっとこうして居られたらいいのに」

ベッドに潜り込んだアルフォンスが、ポツンと呟く。
ロイは、現実問題として、いつまでも匿ってもらい続ける訳にいかないことぐらい良く分かっていたが、あえてそれを口に出して指摘することはなかった。
英国の本宅に戻るか、妻が待つ香港に帰るか・・いずれにせよ路銀が要る。スイスまで辿り着けばスイス銀行の口座があるが・・そのスイスまでが遠い。アルプス越えをすることを想像するだけでも風邪を引きそうだ。

ロイは、アルフォンスの金髪を優しく撫でてやりながら、スイスに行くための準備ができる間、自分はこの子に頼るしかないのだなと、ぼんやり考えていた。

「ロイさん・・」

「なにかね?」

おやすみのキスか、腕枕か・・それともなにか他の突拍子もない要求をしてくるのかと、軽く緊張しながら返事をしたロイであったが、どうやらそれは寝言であったらしく、アルフォンスはすでに軽い寝息を立てていた。
ロイは己の取り越し苦労に苦笑し、さて自分も眠ろうと枕元のカンテラの灯りを消した。







腕が、やけに重たかった。

またリンのやつ、勝手に私の腕に、頭でも乗っけているんだろう・・だから、腕枕というのは頭を乗せるんじゃなくて、首の下に腕を通すものだと何度言ったら理解するんだ・・いや、そうじゃないようだな。両腕が重い。
指の先から、肩まで、締め付けるような重圧感があって・・腕だけじゃない。足先も頭も、締め付けられている。なにか・・べとつく感覚。振り払おうとすると、生ゴムのような感触で、しかしそれは蛇のように蠢いていた。
視界ゼロの暗闇・・その代わりに、耳障りな甲高い笑い声が絶え間なく響いていた。

ああ、そうだ、ずっとこんな空間に私は引き込まれていて・・やがて、どれぐらいの時間が経ったのか、遠くに小さな光の珠がぼんやりと浮かび上がり・・その向こうに、妻がいた。

青ざめた顔で、白いブラウス姿で右手にナイフを持ち・・ああ、あれは護身用にと私が与えたものだ・・獅子の紋章が刻まれた華奢なつくりだが、その切れ味は軍需品にも劣らぬ細身の投げナイフ・・を握り締め、左手首は真っ赤で・・ナイフで円のような紋章を刻んでいたらしい。
妻が居るのは、彼女の自室で・・その床には、円と見知らぬ文字から成る不思議な図表・・魔法陣のようなものが描かれていて・・彼女の切れ長の瞳は、まっすぐこちらを向いていた。

確かに視線があったように思う。薄い唇が動いて、何か叫んだようだったが、耳元の笑い声にかき消されたのか、聞こえなかった。その白い指からナイフが滑り落ち、右手をこちらに差し伸べてくる。
ばかもの、自分の腕なんか斬って何をしているんだ・・と声をかけながら、そちらに向かおうとして・・だが、自分の声すら聞こえなかった・・やがて、彼女が崩折れる。
その背後から、執事のブロッシュが駆け込んできて抱き起こしているのが見えた。彼はとても慌てている様子で・・あいつはいつも慌てていて、どうにも落ち着きがない。ああ、そうじゃなく、まずは傷の上を縛って、傷口を心臓よりも高い位置にして止血しないと・・手を貸したいのに、腕が動かないのがもどかしい。

ああ、私はただ、妻が倒れているのを見ているしかないのか?
歯がみをしている間に、光の珠は消えた。

・・やがて不意に、すぐそばに人の気配を感じる。頬が触れ合いそうなほど、ごく近くだ。
長い黒髪の、細身の・・肌の匂いに妻かと思い「・・リン?」と声をかけると、相手も初めてこちらの存在に気付いたように、視線をあげた。だがそれは、よく似た顔をしているが別人だった・・少年だったのだ。
少年は白いブラウスに黒いコートを羽織った姿で下腹を抱えており、こちらの声が聞こえたのか、驚いた表情をしていた。その左頬には、白い絆創膏が貼られている。

『君は・・リンの弟か、何かかね? どうやら怪我をしているようだが・・』

東洋系の少年に英語は通じないかもしれないと思い、広東語で問いかけてやった。一瞬通じないような表情をしていたので、北方系のシナ語で繰り返してみる。今度はかろうじて通じたようだが、警戒心を解くには至らなかったようだ。少年は怯えたように、ロイが差し出した手を払いのける。
だが、確かに一瞬触れ合ったはずの手の感触が、不確かだった。まるでジェリィの中に手をくぐらせたかのような・・そして、互いの手が通り抜けてしまう。不思議に思って見下ろすと、双方の手が脆く崩れてしまっていた。

ロイは「水死体のようだな」とまるで他人事のように冷静に、ぐずぐずに崩れた己の掌を眺めていたが、少年にはそれがショックだったのか、泣き出しそうな表情になる。
その顔が・・実に妻が幼かった頃に似ていて、ロイは思わず、少年を抱きしめて慰めたい衝動に駆られた。
しかし、実際に少年に触れることはできず、見つめている間に、その姿が徐々に崩れて消えていき・・再び暗闇の中に取り残されて、やがて意識を失い・・次に気がついたら、私はあの路地に倒れていて、アルフォンス君が・・

「ロイさん!」





ハッとして目を覚ます。
視界には、すすけた木の天井とアルフォンス・・ロイは、自分が眠っていたこと、ここがアルフォンスが下宿している部屋であることを思い出した。

「・・うなされてましたよ」

確かに、びっしょりと汗をかいている。まだ、あの笑い声が耳の奥で鳴り響いているようだ。

『・・夢か』

「夢?」

「あ・・ああ、何でもない。夢を見ただけだ」

起き上がり、アルフォンスが差し出したタオルを受け取って、顔を拭った。冷たくべとつく、いやな汗だった。

「夢って、どんな?」

そう尋ねるアルフォンスの表情には、軽い嫌悪の色が浮かんでいたが、ロイはそれに気付かなかった。

「どんな・・そうだね、説明しにくいが・・君は、異世界というものを信じるかね?」

「異世界?」

「ここではない世界・・だよ。私はカイロに辿りついてから、昨日まで・・その異世界に居た・・という内容の夢だよ」

「異世界・・僕には信じられませんが、そういうことをよく話す友人がいます。そこは、この世界にそっくりで、同じ顔の人間も居て・・でも、どこか違うって」

「同じ顔の人間、ね・・ところで、もう朝なのかな」

話題を変えられて、アルフォンスは「リンって誰?」と尋ねるタイミングを失ってしまっていた。

「えっ・・ああ、まだ夜は明けてないです・・そうだ、今日も僕、出かけなくちゃいけないから、今のうちにお食事の用意、しておきますね。まだグレイシアさん眠ってると思うから」

「すまないね。パンとお茶程度で構わないよ」

「そんな、それじゃあ足りないんじゃ・・」

「あまり飲み食いしても、ね」

ロイは言葉を濁すと、苦笑してみせた。
アルフォンスはその理由になんとなく思い当たって、同じように困惑した笑みを浮かべてから「じゃあ、取ってきます」と言って部屋を出た。







採光窓からは、まだ夜闇が差し込んでおり、手探りで廊下を渡り、階段を降りる。台所に辿りつく頃には目はすっかり暗闇に慣れていて、アルフォンスは蝋燭もつけずに食糧庫からパンを取り出す。

「・・誰?」

不意に背後から声を掛けられ、アルフォンスは飛び上がった。その勢いで、頭を棚の端にぶつけてしまう。

「いたたっ・・!」

「アルフォンス君なの? 灯りもつけないで、どうしたのよ」

声をかけたのは、この家の女主人グレイシアであった。
ジュッと低い音がすると、マッチの光がぽうと暗闇を溶かし、ショートカットに理知的な目鼻立ちをした彼女の顔を浮かび上がらせる。グレイシアは、手探りで室内履きの靴底を擦って灯した、そのマッチの火を手燭に移し、後頭部を抱えているアルフォンスへと掲げる。

「泥棒かと思ったわ」

どうやらグレイシアは、アルフォンスがガサゴソしているのに気付いて起きてきたのであろう。
寝巻きにしているらしいウエストのない白い木綿のワンピースに、ベージュのカーディガンを羽織っただけの姿であった。だが、泥棒かと思った割には、武器らしいものを手にしていない。勇敢にも素手で対抗するつもりだったのか、鉄製の手燭を武器にするつもりだったのか、あるいはその発言は冗談で最初からアルフォンスだと分かっていたのか・・その真意は柔和な笑顔に隠されて、分からない。

「す・・すみません。その、起こしちゃ悪いと思って・・パンを貰おうと」

「お腹が空いたの? それにしては、夕食もちゃんと食べたようだけど」

「あの、お弁当にって」

「お弁当? どこかに行くの? 言ってくれれば、作ってあげるのに」

「あ、いいんです、その、パンだけで・・」

「アルフォンス君。怒らないから、正直に言って頂戴」

「えっ?」

「猫・・連れ込んでない?」

「はぁ? 猫?」

「そう、猫。だって、おかしいもの。アルフォンス君がひとりでこんなに食べるなんて・・いつも心配になるぐらい小食なのに、夜中にはスープを2人分ぐらい食べたみたいだし、早朝は早朝で、こっそりパンを漁ってるなんて」

「え・・あ、えーと・・僕も成長期ということで」

「何をいってるのよ。ホントはね、昨日、聞いちゃったんだから」

「えっ?」

「アルフォンス君が出掛けてる間ね、部屋の中になんかが居る気配があったのよ。で、ノックしたんだけど、返事がなくて・・合鍵で開けてみようかなと思ったら、中からにゃーって」

「に、にゃー?」

「そう。だから、猫かなぁ・・って思って。猫、こっそり飼ってない? だめよ、家具を傷つけたりするから」

「か・・飼ってませんよ」

「じゃあ・・野良猫でも入り込んでたのかしら? 外出中は窓を閉めておくのよ?」

「わ、分かりました」

「・・それ、全部アルフォンス君が食べるの?」

「あの、エドワードさんも一緒なんで」

「そう・・?」

アルフォンスが抱えているパンの量に、いまいち釈然としない表情をしていたグレイシアだが、ここはアルフォンスの日頃の行いがモノを言ったのか、それ以上追及されることはなかった。
冷や汗を拭いながら、部屋に戻る。
だがドアを開けて、ベッドに腰掛けて待っていたロイを見た瞬間に「中からにゃーって」というグレイシアの言葉を思い出した。

「にゃー・・って、啼いたんですか?」

「・・誰がだね?」

「あなたが・・さっき、グレイシアさんが昨日の僕の留守中に、猫の声を聞いたって・・あなたでしょう?」

「ああ、あれか・・緊急措置だ」

「僕も聞きたいな。あなたのように真面目そうな人が、どんな顔して、にゃーなんて啼くんですか?」

「別に・・いつもと同じ顔だよ」

「聞きたいです」

「猫の話を聞いたってことは、家主が起きてたんだろう? だったら、今はあまり騒がない方がいい」

ロイにうまくいなされ、アルフォンスは拗ねて軽く唇を尖らせた。
それを見上げて・・ふと、あの夢の中の黒髪の少年の姿に重ねて、男の子も悪くないなと、ついつい考えてしまったロイであった。








今日は、オーベルト氏が大学で特別講義をするという。
アルフォンスはそれを非常に楽しみにしていたはずなのだが、ロイをひとりで部屋に残してきていることを思うと、妙に居心地が悪かった。エドワードが隣の席を陣取って、アルフォンスにべったり寄り添っているのがうっとおしくて、いつもなら快感でもあるピンと張り詰めた講堂の空気・・宇宙ロケットなる魅力ある科学分野の第一人者の言葉を一言も聞き漏らすまいとする緊張感すら、息苦しく不快なものに感じられた。

次の休憩時間になったら・・帰ってしまおう。
アルフォンスはしまいには、そんなことを考えていた。いつもの自分だったらほとんどあり得ない行為だが、なに、この講義を聞き損ねたとしても、普段からオーベルト氏の側でその理論をいつも拝聴しているのだから・・と、自分を無理矢理、納得させる。

そんなことよりも・・あの人の側にいたい。

永遠に続く拷問のようにすら思われた時間が過ぎ、オーベルトが「では、この続きは1時間後に続ける」と重々しく宣言した。講堂に詰め掛けた若者達は、魔法が解けたようにワッと動き始め、伸びをして口々になにやらさざめきながら、席を立っていく。
アルフォンスもため息をついて、広げていたノートを閉じた。ノートには・・何も書かれていなかった。

「アルフォンス・・どうしたんだ? お前らしくない」

エドワードが見上げるようにして、顔を覗き込んでくる。どうやら、アルフォンスの様子がおかしいことは、かなり前から気付いていたようなのだが、講義中は私語がほとんどなかったために、声をかけるにかけられなかったらしい。

「ああ・・なんでもない。今日は、気が乗らなくて」

「体調でも悪いのか?」

「そうじゃないんだけど、ちょっとね・・色々考えごとをしてて」

「悩みがあるのか? だったら、俺に相談してくれよ」

「悩みって程じゃないけど・・」

曖昧に笑って、机の上を片付けて鞄を肩にかけて立ち上がった。
エドワードも慌てて鞄に筆記具をガサガサと詰め込んで、後に続いた。置き去りにされるのを恐れる小犬のように、小走りでアルフォンスの背中を追い掛ける。教会を思わせる天井の高い講堂を抜け、渡り廊下をくぐって、白い噴水のある中庭に出る。

「帰るのか?」

「言ったでしょう? 今日は、気がのらないんです」

「だったら・・俺も帰る・・つか、心配だから、おまえについてく。なんか変だよ、おまえ」

「おかしくなんかないですよ。エドワードさんは心配性だなぁ」

外は程よい陽気であった。そろそろ冬になろうという季節のはずだが、日ざしが妙に暖かい。
こんな天気の日は・・外で散歩でもできたらいいのに。
窓を締め切った部屋で閉じこもっているロイのことを思うと、アルフォンスはたまらない気分になる。この暖かく心地よい陽光を・・持って帰れるものなら、持って帰ってあげたい。

「・・アルフォンスッ!」

呼び掛けられて、我に返る。どうやら、またぼんやりしていたらしい。

「絶対、おかしいって、おまえさ。一体全体、どうしちまったっていうんだよ!」

エドワードが正面に回り込み、両手でアルフォンスの腕を掴む。大声に、周囲の学生が何人か振り向いたようだが、昼食時のキャンパスの学生達の興味はすぐにそれていったようだった。

「困ったなぁ」

「困ってんのは俺の方だよ・・おまえがどっかに行っちまいそうで・・なぁ、やっぱ、昨日からなんかおかしいよ、おまえ。何があったんだよ? なぁ、教えてくれよ・・悩みごとがあるんなら話してくれよ」

「おかしいおかしいって、そんなこと言われてもねぇ」

その手を振り払おうとして、ふと、エドワードをからかってみたくなった。

「ねぇ、エドワードさん。男の人を好きになるって、どう思います?」

「はあっ!?」

エドワードの顔がみるみる真っ赤になる。

「おっ・・女の子じゃなくて、男の人・・かよ!?」

「退廃的だと思いますか? それとも最先端の男女平等ってやつだと思いますか? あるいは・・中世の暗黒時代のようだと?」

「おっ・・おまえ、まさか、男に惚れたのかよ、そんで・・その相手って、まさか・・」

「例えばの話しですよ。エドワードさんが男の人を好きになったら、どうします?」

「どうって・・そりゃあ・・告白して・・欲しくなるだろうな、その・・女の子相手と同じことでさ。別にそれは・・自然なことなんじゃねぇのかな」

「自然なこと、ですか」

「俺は全然、構わないぜ、男相手でも・・その、愛があれば、だなぁ・・!」

「ありがとうございます。エドワードさん、ちょっと勇気が出ました」

「お、おう。いつでもどーんと来い、だ!」

てっきり自分の胸に飛び込んでくるものだと信じて、両手を広げて軽く目を閉じたエドワードは・・10秒ほど待って、何も反応がないのに訝しんで、目を開けた。
その頃、アルフォンスは・・中庭を横切って、門から出て行ったところであった。

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【後書きその1】シャンバラDVD発売までにアザーエデンを仕上げたかったのですが・・間に合いませんでした(てへ)v
そのお詫びにもなりませんが、ハイデ×ムスタングを思いっきり捏造しました。さすがにアメストリス国の伍長を連れてくることはできなかったので、代理に『もうひとりのロイ』ことムスタング氏を強引に拉致してきました。
伍長の方は、ぽっちゃりでお笑いキャラにしているのですが、こっちのロイはそのお詫びのように華奢でカッコいいロイさんです。ジェントルです。一目惚れしてしまったハイデの気持ちもよぉ分かるよ・・で、恋するハイデが可愛らしいこと、可愛らしいこと。
そしてエド・・空気嫁(爆笑)。
ラストまではストーリーが固まっているのですが、またもや相当長くなりそうです。最初はSSのつもりだったんだがなぁ・・(こら)
初出:2006年01月31日

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