Other Eden〜〜どこかにある天国 |
2. 再会の地兄弟が大陸を縦断してアジアに到達するのには、1年半以上の歳月がかかった。 もちろん、徒歩だけでなく馬車や列車も利用したのだが、実際には香港への旅路よりも、欧州を出るまでが長かったのだ。 トゥーレ協会がウラニウム爆弾を持ったまま欧州入りしたのではないか、今でもトゥーレ協会の残党がそれを持っているのではないか、それを確認してからでないと欧州は出られない・・と、エドが考えたからだ。 「当てもなく探しものをするのって、本当に大変だよね。賢者の石のときも大変だったけど、今回は錬金術が使えないし、兄さんの国家錬金術師の研究費用も出ないし・・もっと大変だよね」 ふたりが歩いているのは、大きな川沿いの道であった。夕陽を浴びてオレンジ色に輝く川は、対岸が見えないほど幅広く、多くの褐色の肌の人々が水浴びをしたり、洗濯をしたりしていた。 「・・どういう意味だよ?」 「ラングさんから貰ったお金、あとどれぐらい残ってる?」 「・・センズに換算すれば、あと1万5千センズぐらい・・かな」 「うそぉ! それだけで、香港までどうやっていくの!? まったく兄さんってば、計画性がないというか、ちゃらんぽらんというか・・! だから、トルコの国境沿いでノーアと別れたときに、ノーアの差し入れ、もらっておけば良かったのに!」 「女から金もらうなんて、みっともなくてできねーよ」 「そういう台詞は、稼いでいる男が言うんだよ」 「うっせーなぁ。ともかく、使っちまったもんはしかたねーんだから、残った金でなんとかするしかねーよ。こっから歩いて港まで出て、そこから船に乗って・・多分、ふたり分の船代ぐらいにはなるだろ」 「もし、足りなかったら?」 「・・しかたねーから歩くしかない」 「歩いて!? 何日かかると思ってんの!? その間のご飯はどうするの!? 大体、ただでさえ、欧州出てからは言葉が通じるひとを探すのすら大変なのに・・そのうえ文無しなんて!」 「ヨック島のサバイバル生活、もっぺんしよーぜ。大丈夫、このへん暖かいし、動物もいっぱいいるみたいだし・・川で魚も取れるぞ」 「そんないい加減なこと言って・・! こないだ、ボンベイって街で、牛捕まえて食べようとして、大勢のお坊さんに町中追い掛け回されたのに、兄さん、こりてないの!?」 「ありゃあ、家畜だったからだろ。野生動物だったら大丈夫だ、多分」 「兄さん、サイテー!」 アルは半べそ状態だが、それも無理はない。以前、旅をしていた頃は、アルの肉体は疲れも痛みも感じない鎧そのものだったが、今回は生身なのだから、疲れもするし腹もへる。しかも、歩きづめで足の裏に血豆ができていたのだから。 「・・じゃあ、その港まであと、どれぐらい歩くの?」 「さぁ・・この川の流れに沿って歩いてりゃ、間違いなく海には着くんだから、あと1、2時間ってとこだろ?」 「それ、地図かなんかで確認した?」 「いや・・この辺の地図なんか持ってねーよ」 「じゃあ、その1、2時間っていう根拠はどこ?」 「なんとなく、第六感で。つか、夜になる前に着けばいいな、と。まぁ、気にすんな。いつか着くことに変わりねーんだからさ!」 「・・もう、やだぁ!」 ついに、アルがしゃがみ込んでしまった。さすがに泣き出したりはしないが、驚いたエドが駆け戻って肩を揺すっても、顔を上げようともしない。 「おいおい、アル・・腹でも痛いのか?」 とんちんかんな兄の心配の仕方に呆れて、アルはもう返事をする気力も出なかった。 「どした? あんたら、見かけない・・その子、具合悪い?」 不意に話し掛けられ、振り向くと、浅黒い肌に黒髪の少女が、頭に大きなカゴを乗せて立っていた。カゴに野菜だの果物などが積んであるところを見ると、市場での買い物の帰りなのだろう。 「・・英語、いけるのか?」 「少し。ここ英国領。私、パニーニャ。このへん、夜、盗賊出て危ないよ」 「いやぁ、すんませんねぇ、ご馳走になっちゃって、泊めて頂くことにまでなっちゃって・・これ、辛いけど美味しいですね。お代わりもらえます?」 エドが空になった皿を差し出し、アルも恐る恐る続く。 「いいのよ、いっぱいお食べ」 パニーニャに連れて来られた家の主婦はそう機嫌良く言って、皿にスープを盛ってくれた。スープには、羊肉やら野菜やらがごろごろ入っている。 「それにしても、あんたら、香港まで行くとか行ってたな」 対照的に家の長である老人は、ブスッとした顔でスープをすすり、大きな平たいパンをちぎりながら、そう尋ねた。 「ええ、香港にひとを訪ねて。紹介状まで書いてもらったんですが・・リン・ヤオって人」 「ほう? で、ここからどうやって行くつもりだね」 「船が・・あればいいなとは思っているんですが、船賃が高かったら、歩いて行こうかと」 「香港までか?」 老人だけでなく、主婦もその夫もびっくりしたらしく、顔を見合わせている。アルも「ほら、やっぱり歩いていくのは無謀だったんだよ」と、胸の底で兄を罵りながら、ちらっとエドに視線を走らせた。 「お父さん、この子達・・」 主婦が、恐る恐る老人に声をかけた。老人は食事を終え、煙管に火をつける。しばらく、重苦しい沈黙が食卓を支配し、幼い孫が怖がってぐずり始める。パニーニャがそっとその幼児を膝に乗せて、揺すぶってあやしていた。 やがて、老人がポンッと勢いよく煙管を床に叩き付けるようにして、灰を落とす。 「分かった。お前ら、わしの船に乗れ。5日後、わしは船で、茶葉を香港に運ぶことになっている。その船に乗せてやる。ただし、タダで乗せてやるわけではない。船員として働いてもらう。船での仕事はパニーニャに教えてもらえ」 「えっ、本当ですか? お爺さん、ありがとうございます!」 「ぶぁっかものッ! お爺さんではないっ! ドミニクキャプテンと呼べっ!」 「ドミニク・・キャプテン?」 「ドミニクはわしの名じゃっ!」 ドミニクが大声を出したために、ついに幼児が泣き出してしまった。ドミニクは自分が泣かせたという自覚があるのかないのか、それ以上はエド達には用はないとばかりにパッと孫に向き直ると、パニーニャからその子を奪い取り「おお、よちよち、べろべろばーっ」などと始めた。 兄弟が、偏屈そうだったドミニクのその豹変ぶりにあっけに取られていると、パニーニャが歩み寄って来て、ふたりの肩をバンと叩いた。 「良かったな!」 「・・お、おう」 「あたしもドミニクキャプテンの船員だ。昔、海賊だった、今違う。香港までは仲間だな。船酔い、高いとこ、平気か? 5日間は猛特訓だな!」 「と、特訓!?」 「キャプテンの船、大きな帆船。高いマスト登る。見張りもする」 パニーニャがニッと笑い、ふたりもつられて笑った・・実際には、その5日間の猛特訓と船での仕事はかなりハードで、ふたりは全身筋肉痛に襲われることになるのだが。 ゆっくりと扉を開く。男は、ベッドの上に上体を起こした格好で、まっすぐこちらを向いていた。服は、眠っている間に例の軍服からパジャマに替えてあった。 正面からその顔を見て、リンは金縛りにあったように動けなくなった。ああ、その顔はまさに・・リンは動揺して、歯の根が合わない口許を押さえる、その両手すら細かく震えていた。 「ムッ・・ムスタング大佐どのぉおおおおおおおお!」 凍り付いているリンの傍らを、巨大な影がすり抜けて、男に突進していった。 「生きておられましたかぁああああああ! 我輩ッ大感動ぉおおおお!」 アームストロングの樽のように太い腕が、ぐわっと広げられて男を包み込もうとする。男は一瞬、目を見開いたようであったが、次の瞬間、伏せるようにしてその腕を避けると、すばやく身を翻してベッドから転がり出、なおも追ってくる感激のハグから辛くも逃れた。 その動きは、アームストロングと初対面の人間には到底とれるものではない。やはり、ムスタングなのだろうか? 「ロイ?」 リンがそっと呼びかけたが、男は反応しなかった。 なおも、全身の筋肉でムキムキと喜びを表現しているアームストロングと対峙したロイは、微妙な間合いを保ちながら、じりじりとにらみ合っている。 「・・ロイ・・じゃないノ?」 「えっ? 私は・・ロイというのか?」 男が、初めてリンの存在に気付いたように、視線を巡らせた。 「お美しいお嬢さん、なぜ泣いて・・っ・・うぎゃぁああああああ!」 リンに気を取られて油断した男は、ついにアームストロングに捕まってしまい、迸る汗と滾る血潮の熱き抱擁を受けたのであった。 「記憶喪失ってやつだな・・まったく、どこまでも厄介ごとに巻き込みやがって」 ランファンに呼ばれて来たノックスは、ぶつくさ言いながら男を診察する。 「こっちの目は、見えないのか」 「・・はぁ、そのようだ」 「マダム、あんた、旦那が戦場で目をやられたって聞いてるか?」 「・・聞いてナイ」 「そうかい・・アームストロング少佐には、アバラをヘシ折られずに済んだらしいな。目の他には、新しい外傷も特になし・・か。どうすんだ? 当局に届け出るのか?」 「しばらく・・うちに置いてオク。そのうち、ナニカ思い出スかもしれナイし・・」 そこまで言うと、リンとノックスが、アームストロングの方を見やった。当局・・とは英国の警官隊だ。その意味に気付いたアームストロングは、胸をドンと叩いた。 「大丈夫、我輩を信用してくだされ! この件は内々に・・ということですな!」 「まぁ、そういうこっちゃ」 「オネガイネ」 やがて、嵐のように巨漢の男と無精ヒゲの医者が去り・・寝室には、ロイと黒髪を長く伸ばした女が残された。 「・・まったく状況が掴めないのだが・・お嬢さん、私は・・ロイというのか?」 「本当ニ何も覚えてナイんだネ」 女はため息をつくと、ロイが横たわるベッドの傍らに椅子を引いて来て、その枕元に座った。女は、詰め襟で長袖の、体のラインがくっきり浮き出る妖艶なシルエットのワンピース姿だ。胸元や袖口に、銀糸で蔓草模様のような刺繍が入っている。一見、喪服のようであったが、裾には深いスリットが入っており、女が足を組むたびに妖艶な白い太股がちらっとのぞく。 女がツィッと手を伸ばして、ロイの顎を捕らえた。切れ長の目で、値踏みでもするようにロイの瞳を覗き込む。やがて、小さな声で「イヤ・・チガウ・・」と呟いて、火傷でもしたように手を引っ込めた。 「違うって・・その、貴女の旦那さんではない・・ということか?」 「デモ・・本当にソックリなんダ・・名前も同じデ・・」 「名前も?」 「このネックレス、してタ。ほら、この名前のトコ・・」 「ふむぅ、ロイ・ムスタング・・なるほど。ということは、私はロイ・ムスタングなのだな。そして、貴女はムスタング夫人というわけか」 「主人が戦死扱いになってカラ、籍は抜かさレタヨ。もともと、本国のご両親は結婚に反対してたかラ」 「では今は・・なんとお呼びしたら良いのかな?」 「この屋敷の人間は“お館様”と呼ぶことガ多イシ、アームストロング少佐ハいまだに“ムスタング夫人”呼ばわりだシ・・マダムと呼ばれることもあるナ・・名はリン。リン・ヤオ」 「そうか・・では、リンと呼ばせてもらおう。マダムと呼ぶにはまだお若い」 リンが、泣き笑いのような表情を浮かべる。 「喋ってるのを聞いタラ、ホントに別人ダネ。主人はそんなキザな喋り方しなかったヨ」 「それは・・残念だったな。人違いだと判明したら・・私はどうすれば良いのかな」 「・・記憶が戻るマデ、ここニ居たらイイ。どこか行くアテがあるわけでもナイんダロ?」 「それは・・ありがたいことだが」 「それニ、こうしてるト、本当に主人が戻ってキタみたいデ・・記憶が戻ルまでハ・・せめて、それまでは居てほしイ・・無理にトは言わナイ。イヤなら出ていって構わナイ」 リンは目をそらしながら、独り言のように言う。口許は笑みの形に吊り上がっていたが、スカートを握る手は微かに震えており、ロイはそれを見逃さなかった。 「確かに私は、どこかに行くあてがあるわけでもない・・それに、私で良ければ、貴女の心にぽっかりと空いた悲しみの穴を塞いで差し上げよう・・失恋の痛手は新しい恋が特効薬だ。悲しんでいるレディを残して立ち去るなんて、私にはできない」 ロイはそう言うと、リンを抱き寄せたが、細身の脚体がロイの胸に転がり込むときには、リンは笑い転げていた。 「あなた、絶対主人じゃナイ・・ホント、キザ。全ッ然違う・・同じ名前デ、同じカオなのに・・」 笑い過ぎてにじんだ涙なのか、リンが目尻を指で拭った。そして、笑いの発作が収まって、ふっと見つめあう。 ・ ・ ど こ に い る ? ロイは跳ね起きた。いつの間にか眠ってしまっていたらしい。隣には、半裸の女・・リンが横たわっていた。 「ドウシタノ?」 リンもウトウトしていたらしく、あくびをかみ殺しながら、物憂そうに上体を起こす。着痩せするタイプなのか、はだけたドレスの襟元から、豊満な乳房が重そうに揺れた。 「いや・・夢を見ていた」 「ドンナ?」 「誰かを・・探しているらしいんだが・・」 「誰かっテ誰?」 ロイは思い出そうと、視線を宙に泳がせ・・やがて大きく息を吐いて首を振った。 「分からん」 「女の人?」 リンの声に微かな怒気がこもる。長い指を伸ばすと、ロイの柔らかい尻の肉をギュッとつねった。 「いたたたっ・・違う、女じゃない・・多分、違う!」 「フーン? ジャ、人捜ししてタのカナ? 要人の捜索アルイハ調査をしていタ特殊部隊? あり得るカナ」 「特殊部隊?」 「見つかった時には、アレ着てたんダヨ。さっき着てたパジャマは、主人ノ」 そう言いながら、リンは部屋の隅のコート掛けを指差す。そこには、確かに青い軍服のような服がぶら下がっているのだが、ロイはそれを見せられても何も思い出せず、キョトンとしている。 「ただの夢ナノカ、それとも記憶の一部ナノカ・・誰かを捜していル・・カ」 つぶやきながら、リンは起き上がって身支度を始める。窓から見える空は、紅から深い紫へと雲を染めていた。 「ロイはここでゆっくりしてテ。服はそこのクローゼットから好きなノを選んでイイヨ・・後で、ブロッシュに食事を運ばせル」 「どこへ行くのかね?」 「うちハ、これからガ営業時間でネ」 「これから営業? 酒場でもやっているのかね?」 「ハハハ・・あなたが主人じゃなくてヨカッタのかもしれナイ。主人だったラ、こんな商売してルって知られタラ、私、スッゴク怒られルヨ」 「はぁ? 怒られる? 何の店なんだ?」 リンは答えずに、ウィンクひとつ残すと、部屋を出ていった。 リンが出ていってしばらくすると、ワゴンを押しながら金髪の青年が入って来た。多分、彼がブロッシュというのだろう。 「お食事をお持ちしました」 真面目くさった顔をしていたブロッシュだが、部屋中にスラックスを脱ぎ散らかし、なおも一着と格闘しているロイを見て、つい、ポカンとしてしまった。 「あの・・?」 「その・・ウエストが入るズボンがなくてな・・ちょっとキツイのだ」 「えっ? ああ、ホントだ・・多分、旦那様とサイズが一緒だろうと思ってて、つい油断した・・しまったぁ・・お館様に叱られるっ!」 「やはり私は別人のようだな・・」 意外なところでも別人説が立証されてしまったことに、ロイは少なからずムッとした表情であった。 「僕のスラックスでも・・多分、ダメですね」 「う・・うむぅ」 「シャツのボタンは、ちゃんと留まりますか?」 「い、一応」 「うわぁ・・シャツもパッツンパッツンですね。こちらのシャツでしたら、大きめですので、大丈夫だと思います・・あ、この乗馬ズボンでしたら、ウエストをゆるく作っているので・・これ、半ズボンだからハイソックスが要るンですね。あと、ベルトじゃなくてサスペンダーか」 ・・やがて出来上がったロイの格好は、とてもセンスが良いとはいえないひどい状態であったが、サイズの問題は如何ともし難い。 「こ・・こんな服装、お館様のお気に召さないでしょうね、きっと」 「ファッションはよく分からんが、多分・・この格好がダサイということだけは、見当がつく」 「うーん、まずいなぁ・・仕立て屋を叩き起こして、今晩中になんとかしてもらおうっと。あの、じゃあ、明日の朝までは、あのパジャマをお召しになっていてください。パジャマは問題なく着れたんですよね?」 「まぁ・・ウエスト、ゴムだからな」 ブロッシュが、バサバサと床に広がる服を掻き集めて畳む。その間に、ロイは仕方なく一度来た服を脱ぐと、パジャマに着替えた。 「えっと・・これが、さっきの乗馬ズボンですよね」 「うむ」 「じゃあ、これにサイズを合わせてもらうということで・・あ、忘れてた。僕、お食事持ってきたんでした。すみません・・もしかして、冷めてるかも・・あの、温め直して来ましょうか?」 「いや・・結構だ。ところで、この館というのは、何か・・酒場か何かをしているのかね? 営業がどうとかと言っていたようだが・・」 「あ・・ああ」 ブロッシュは一瞬言い淀んだ後、気まずそうに笑った。 「旦那様がいなくなられてからは、この館の東館の方を娼館にしているんですよ。あ、大丈夫、こっちの西館とは繋がってないから、客がこっちに紛れ込んでくることもありませんし、うるさいこともありませんから、ご安心ください」 「娼館・・ね」 それはそれは。確かに、そんな商売をご主人に知られたら、さぞやコッテリと叱られることだろう。 「彼女もその・・客をとっているのか?」 「いいえ。とっていないはずです。でも、恋人になってほしいとか、再婚したいという方は、いくらでもいるとかで・・そういう方がたっぷり貢いでくれたり、スポンサーとしてついてくれたりしてるそうですよ」 「ふうん・・」 それはもったいないな、イイ女なのに・・という台詞は、彼の女主人を侮辱することになると、さすがに気付いて飲み込む。 「それでは・・何か有りましたら、遠慮なく呼びつけてくださいね」 「執事は君ひとりかね?」 「ええ・・昔は大勢居たんですが・・今はそんなに雇えないからと。ここに残ったのは、無給でもいいから、お館様にお仕えしたいというものだけで」 「なるほど、そして君も彼女を熱烈に慕っているひとりという訳か・・確かに彼女は非常に魅力的だ。食事は・・食べ終わったら、ワゴンごと廊下に出しておけば良いのだね? お手洗いは・・」 「廊下をでて右の突き当たりです」 ブロッシュが出ていってから、ロイはおもむろにワゴンの上の銀盆の蓋を取り上げた。 白い磁器の器は上品な青い蔦の紋様で縁取られており、その青に負けない鮮やかな色の野菜のソテーと魚介料理が、巧みに盛り付けられている。食欲をそそられたロイは舌舐めずりをしたが、肝心のナイフとフォークが無いことに気付いた。あの執事が用意し忘れたのだろうか? だが、今は仕立て屋に走っているはずだから、呼んでも来ないだろう。 いっそ、手で食べてしまおうか・・とすら思ったのだが、ふと、食器の傍らに二本の細い棒が添えてあることに気付いた。確かこれは・・チョップスティックといって、東の国でナイフとフォークの代わりにするものだ。なるほど、これで喰えということか。 しかし・・どうやって使うのだろう? ロイは、両手に1本ずつ箸を握って、しばし考え込んでいた。 「ぐぁああああ、腕が痛い腰が痛い背中が痛いケツも痛い足が重いっ!」 うめきながらエドが二階ベッドの下段に倒れ伏し、アルがその隣に潜り込む。アルの方は逆に、声も出ないぐらい疲れきったらしく、枕に頭を乗せたかと思うともう、スヤスヤと寝息を立てていた。正式なクルーではない彼らの寝室は、もともと倉庫にしていた狭い船室で、ベッドの脇にはブイだのロープだのが、ごちゃごちゃと押し込まれている。 「エドも寝なよー明日も早いよ」 パニーニャが呆れたように言いながら、ベッドの上段にハシゴも使わずひょいと登る。 「あちこち痛くて眠れねぇよ」 「寝なよ。灯り、消すね」 返事も聞かずに、パニーニャが天井に吊るしている小さなランタンに手を伸ばし、フッと火を吹き消した。たちまち視界は真っ暗になり・・やがて暗闇に目が慣れ始める。エドは知らず知らずのうちに、アルの寝顔に見入っていた。 昼間は・・昔のようにバカ騒ぎをしながら、殊更に明るく振る舞っていた。それにツッコミを入れるアルも、テンションが高くて・・おっとりしていたハイデリヒとは大違いなのだが、こうして夜、そばで寝ていると「やっぱり似ている・・」と思う。顔立ちだけでなく、微かな寝息や肌の匂いまでもが。 髪を撫でてやると、じっとりと汗ばんでいた。単に、南洋は暑くて寝苦しいだけなのだろうが、エドは「そういえば、いつだったか、ハイデリヒが熱を出した時にも、こんな感じだったな」などと、その熱い肌の感触を思い出してしまう。 「お、おい、何考えてんだよ。まだ熱あるじゃねぇか。無茶だって・・」 枕元に椅子を置いて、ハイデリヒの看病をしていたつもりが、つい眠ってしまったらしい。 ハイデリヒは、そんなエドを抱き寄せ、体格差にものを言わせてベッドの上に引きずり上げたのだ。 「エドワードさん・・今・・またあっちの世界の夢を見ていたんですか?」 「あ・・ああ、いつものことだから、気にしないでくれ。だから、こんな・・やめろって、おい」 エドはハイデリヒの腕の中から抜け出そうとするが、彼の体調が気になって、かえって本気で抵抗することができず、軽々と組み敷かれてしまう。 「ねぇ・・エドワードさん。大佐って、誰です?」 優しい口調、にこやかな笑顔・・だが、碧い瞳の奥だけは笑っていない。 「エドワードさん・・僕は、その大佐って人の代わりなんですか?」 「ち・・違うって」 「そうですよね。僕は弟さんの代わり・・でしたよね」 そして、今度は、弟さんが僕の代わりですか? エドワードさんにとって、僕は代用品なんですか? 僕は、僕なのに・・! 「・・アルフォンスッ!」 いつの間にか、眠っていたらしい。絶叫しながらエドは飛び起きていた。 「ふぁ・・兄さん?」 「エド、うるさーい」 「あ・・ごめん、寝惚けた・・」 「迷惑だなぁ・・もう」 ふたりはブツクサ言いながらも、すぐに再び寝入ってしまったが、エドはなかなか動悸がおさまらず、全身もぐっしょりと滴るほど汗をかいていて、とてもじゃないが眠れそうにない。 そっとアルをまたぐようにしてベッドから降り・・大体、いくら俺が小柄でアルも子どもだからって、男ふたりがこんなシングルベッドに寝ているから、寝苦しいんだ。明日から、俺、床に布団敷いて寝ようかな・・いや、機材を取りに来たクルーに邪魔にされて、蹴飛ばされるのがオチかな。 エドは寝室を抜け出すと、階段を登って甲板に出た。海は鏡のように凪いでおり、月明かりを照り返してギラギラと輝いている。星は見えなかった。月が明るすぎるのだ。 「アルフォンス・・」 そして、エドは夜明けまで甲板の手すりにもたれて、ぼんやりと海を見ており・・またいつの間にか眠ってしまったらしく、翌朝、心配して捜しに来たパニーニャとアルに、1発ずつ蹴り飛ばされて起きるハメになった。 ブロッシュが必死で駆けずり回った甲斐があって、小柄な東洋人の小間使いが起こしに来る前に、仕立て直した服がこっそりと届けられた。 「お館様が、お食事前ニ中庭に来るヨウニ、ト」 「中庭に? 今すぐということだな?」 ベージュのベストに蝶ネクタイ姿のロイが中庭に出ると、リンとノックス医師、そして老人が待っていた。リンは髪を束ねて、ゆったりした白いズボンに黄色い短袍、ぺったんこの布靴で、両腕は手首から肘までサポーターのように包帯を巻いて、まるで男のような装束をしていた。 「オハヨウ」 「・・ああ、おはよう。その格好は?」 「昨夜、皆で話し合ったのだがナ、主人でないのなら無駄飯は食わせられナイと皆が言うンで、じゃあ用心棒として雇ウことがデキナイか、というコトになっタ」 「は・・はぁ、用心棒・・」 「女手ひとつでやってル店だかラナ、確かに用心棒ガ必要ではある。あなたハどうやらドコカの軍人のようダシ、鍛えたことのあるカラダもしていタから、問題ナイとは思ウンダガ・・念のため、どの程度使えるカ、テストをしてみたイ」 「テスト? まさか、リ・・リンが、か?」 「まずハ、フーとランファンで・・ホンキでかかってイイゾ。ただの庭師ト小間使いと思っていタラ、ヤラれるゾ。かなりの使い手だからナ」 ランファン? と、とロイが振り向くと、小間使いの少女が、白エプロンと黒いドレスをためらいもなく脱ぎ捨てる。ロイは一瞬ギョッとしたが、メイド服の下は黒ずくめの上下を着込んでいた。白い腰紐が長く垂れ下がっている。見れば、庭師だという老人も同じような黒い服を着ていた。 『では、参ります』 状況を飲み込めないロイが突っ立っている間に、ランファンが踊りかかってきた。人間業とは思えないほど高く飛び上がり、次の瞬間、右足を繰り出してくる。かろうじてそれをかわすと、今度はフーの拳が襲ってきた。 とっさにロイが右手を構えた。何かの武術の構えかと警戒したランファンとフーが、じりっと距離をあけた。パチンと指が鳴らされ・・数秒後、何も起こらないのを知ったふたりが、気を取り直して再び攻撃に入った。 「ガンバレヨォ。こいつラにヤラれるようジャ、うちでは雇えナインダ。頼むカラ、ガンバレ」 リンが他人事のように、楽しげに声をかけたが、ロイの方は必死だ。逃げ回るだけでは埒があかないと悟って反撃に入り、徐々に形勢を巻き返していく。やがて、ロイの拳がフーのみぞおちにまともにヒットし、フーが咳き込みながらうずくまる。ランファンは腰紐を引っ張られて、横転しかかったところを捕まり、細いウエストを小脇に抱えられてしまった。ランファンはびっくりしてジタバタと暴れるが、これは勝負あったというところだろう。 「・・いかがかな?」 「ウーン・・ちょっと時間がかかり過ぎカナ? 次は私ネ」 「いや、その、ちょっと休憩させてもらいた・・おわっ!」 ランファンを下ろしたと見るや否や、リンの足が風車のように旋回し、グワッと風を切ってロイの左のこめかみ目がけて飛んで来た。ロイが吹き飛ばされ、もろに地面に叩き付けられる。そこに容赦なく第2波、第3波が襲ってくるのを、転がりながら逃げ回り、なんとか隙をみつけて跳ね起きる。 「美しいレディに手荒な真似はしたくないのだがっ・・!」 口ではそんなことを言っているが、実際には「したくない」どころか、手も足も出ないぐらいに押しに押されていた。この館に、今の今まで用心棒がいなかった理由が、なんとなく分かるような気がした。 5、6回は地面に叩き付けられ、小動物が猫になぶり殺されるように徐々に追い詰められていく。ロイはままよとばかりに足を止めた。 「もう諦めタカ!」 叫びながら、リンがとどめの一撃となるであろう手刀を振り下ろして来た。まるで、猛禽が舞い降りて獲物をしとめるように・・ロイは、その一瞬を狙っていた。リンの手首を捕まえると、背中にねじりあげたのだ。 「・・ッツ!」 「合格・・かね?」 「アァ、そのようだネ」 リンは自分が負けたというのに嬉しそうにニッコリ笑うと、ノックス医師の診察を受けているフーに『これで文句はないだろ?』と声をかける。『・・まぁ、仕方ございませんな』と、フーが不承不承、うなづく。 「おまえさんもこっちに来い。擦り傷だらけだろう・・まぁ、いつもの“採用試験”では、打ち身に骨折は当たり前・・打ち所が悪くて半身不随まで出るほどだ。右目が見えねぇってのに、あそこまでやり合えたってことは、おまえさん素人じゃねぇな。やっぱりどっかの軍隊で格闘の基礎訓練をうけたことがあるようだ」 「・・そ、そうなのか?」 ロイがすっかり息を切らしてへたり込み、動けなくなっているのを見て取るや、ノックスはヤレヤレといった様子で薬箱を持って、ロイの傍らに歩み寄って来てくれた。 「でも、どこの軍だったカは分からなカッタネ。それぞれ独特の体術の型があるハズだけド」 一方のリンは、先ほどの激しい動きが嘘だったようにケロッとしており、汗ひとつかいた気配が無い。どうやら、あれでもかなりの手加減をしていたらしい。ロイは内心ゾッとした。 「ああ、ジュージュツやテコンドー、カラテなどの特定の格闘技はしていなかったようだな」 「ナンカの“型”が見えたラ、その線で探るという方法モあっタんだけドネ。重度の記憶喪失者デモ、体で覚えテイル事・・自動車の運転とかハ、体に染み付いテイルってイウから、何かのヒントは無いかっテ、期待シタんダケド・・」 そこに、ブロッシュがやってきた。 「あの、朝食の用意ができました。ドクターもご一緒にどうぞ・・ムスタングさん、肩、貸しましょうか?」 ブロッシュがロイの腕を取り、持ち上げる。食事の支度をしていたらしいブロッシュの、美味しそうな移り香をかいで、ロイの腹がグゥと鳴った。空きっ腹であれだけ激しい運動をしたのだから、当然だ。しかし、満腹で闘っては腹痛で動けなくなる・・というのも一理ある。 「その・・ブロッシュ君、朝食にはその・・ナイフとフォークがつくのかね?」 「いえ、お箸で召し上がる予定ですが?」 「済まんが、ナイフとフォークを用意してくれないか。どうやら私は、箸をうまく使えないようだ」 小声でぼそぼそと依頼すると、ブロッシュは「旦那様は器用にお使いになっていたんですがねぇ・・むしろ、お館様の箸の握り方をお直しになったほどで」と、苦笑いした。 船が港に着いたのは、昼過ぎだった。 「残念。夜はキレイなんだよ。街の灯りが」 「へぇ? そうなんだ。見たかったな」 「しょっちゅうここ、行き来してる。また船、乗りに来たらいい」 「・・今度はちゃんとお金払って、お客として乗るよ」 「そか? マスト登り、うまくなってたぞ」 年齢が近いせいか、パニーニャとアルが仲良く並んで甲板のフェンスから身を乗り出し、おしゃべりをしている。エドはそれを、やや離れた場所で聞くこともなしに聞いていた。 ドミニク号が桟橋に着くと、待ち構えていた苦力達が乗り込んで来て、茶葉の入った大きな袋を運び出していく。一足先に降りた船長のドミニクが、桟橋で買い手であるらしいチャイニーズと話を・・多分、次の商談をしているのが見えた。チャイニーズが手にしている板のような・・算盤という計算道具で値段を提示しては、ドミニクが仏頂面で珠を動かして反論したりしている。 やがて、商談がまとまったのか、ふたりが握手をして・・ふと、こちらを振り仰いで手を振った。 「あ、キャプテンが呼んでる。行こうか、アル」 「え、ホント? じゃあね、パニーニャ」 「桟橋まで荷物持つの、手伝ってやるよ」 三人が桟橋まで降りると、ドミニクはポケットからしわくちゃになったポンド紙幣を掴み出して、エドに差し出した。 「これ、少ないが給料だ。あと、こちらのスォさんが、おめえらが捜しているリンって人を知ってるそうだ」 「えっ、本当ですか?」 「じゃあな。おめえらの旅の目的は知らねぇが・・幸運を祈る。頑張れよ」 ドミニクはニヤッと笑ってみせると、浅黒く日焼けした武骨な手を差し出す。エドは自分の右手が義手なのを思い出して一瞬躊躇したが、思い直してギュッと握り返した。 「客? 誰ダ?」 中庭にテーブルセットを据え付け、ロイと一緒の午後の紅茶を優雅に楽しんでいたリンは、一瞬にして不機嫌になって、ブロッシュをにらみ付けた。 「エルリック兄弟と名乗っていまして・・これが紹介状だそうです」 ブロッシュが差し出した封筒を受け取ったリンは、なにげなくチャイナドレスのスリットをめくると、ガーターベルトで吊ったストッキングの太股に挟み込んでいた細身のナイフを抜き出し、それで封を切る。 護身用ナイフはいつも、そうやって身につけてるのだが、ブロッシュには刺激が強過ぎるのか、真っ赤になって目をそらしている。ロイもいささか度胆を抜かれたようで、スコーンをくわえたまま動きが止まってしまった。 「フーン・・フリッツ・ラングの知り合いカ。ナルホド・・」 「どういたしましょう?」 「応接室に通セ・・その前に謝寿歌をここへ」 荷物を執事に預けて、応接室に通されたエルリック兄弟は、その重厚な英国式の豪奢な室内装飾に圧倒されながら、女主人に面会した。女主人は艶かしい黒いチャイナドレス姿で、肘まで隠れる白手袋をはめて、孔雀の羽で作られた扇を弄びながら、悠然とソファにもたれている。 「紹介状ハ読んダ。探し物ヲしていルようダナ。できる限りの協力ヲするようとのことダガ」 「エドワードです。こちらは弟のアルフォンス。よろしくお願いします」 「・・君達ハドイッチュ? 英語に少し訛りがあるネ。でも瞳の色ハ違う・・どこの国?」 「えっと・・ワイマール共和国から来ました。その、ミュンヘンから」 「ふうん? ジュダヤ? その割にハ金髪だシ・・ご両親は何系?」 「そんなの・・関係ないでしょう?」 「大ありサ。ここは中華国であり英国でもある・・ドイツは敵国ナンダヨ。そこから来た身元不明の子どもふたり預かルンダ、ある程度こちらモ自衛させテくれなイト・・」 「親父はホーエンハイム・エルリックだ。それなりに名が知られているはずだけど・・聞いたことないか?」 「ホーエンハイム? いや、知らんナ」 「・・あっ、あのねっ、僕たち本当はアメストリスって国の生まれでね、故郷はリゼンブールって言ってね・・」 リンの探るような視線に耐え切れなくなったのか、アルが唐突に割って入り、しゃべり始めた。エドはしまったという顔でアルの口を塞ごうとしたが、アルはそれを振り払って「アメストリスって国の首都はセントラルって言ってね、そこには汽車が通っていて・・」なとど必死に訴え続ける。 リンは一瞬ポカンとしていたが、何かに思い当たったらしく、やがてアルの正面に向き直り、目を覗き込むように軽く身を屈めた。 「へぇ? つまり君達ハ、よその世界からやって来たッテワケ?」 「信じられないだろうけど、そうだよ」 「・・アルッ!」 「だって兄さん、本当のことだろ?」 「あの・・ヤオさん、弟、少し長旅で疲れているんです。その、ご無礼をお許しください」 「イヤ、別ニ構わナイ・・ソレデ? その国のハナシをもっと聞かせてクレル?『ブロッシュ、あの方の軍服を持って来なさい。ランファンはお茶を煎れて来て』・・ああ、気にしないデ・・アルフォンス君、ソレデ?」 「ヤオさん、“俺達の世界”に興味があるのか?」 トゥーレ教会での事件を経験しているせいかエドが声を強ばらせるが、リンはニヤッと笑ってみせた。 「私モ昔、別の世界の夢を見タ。そこでハ、リン・ヤオというノハ東の大国ノ皇帝デ、多くの妃ガ居た・・とうニ忘れていタことだったけどネ・・別の世界が実在するなんテ考えたコトもなかったシ・・でも、それガ実在し得るのダトしたラ・・もしかシタラ・・」 「お館様、お持ちしました」 金髪の青年執事が持って来た青い服に、兄弟の視線が吸い寄せられる。見覚えがあるそれを、リンが広げてみせた。 「・・その世界ニ、こんな服ハある?」 「セントラル軍の軍服!? それもこれ、大佐のだよね、兄さん!」 「本当だ、まさか!? おい、これを来ていた人がいるのか!? 会わせてくれ!」 リンは予想が当たったことに、むしろ軽く落胆した様子で苦く笑うと、ブロッシュに軍服を返しながら「こっちダ・・中庭にまだ居るはずダ」と言って立ち上がった。 |
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【後書きその2】いきなりやってしまいました、ロイとリン・・そのくせ、サブタイトルに「再会の地」とか書いておきながら、ロイとエドの再会シーンの直前で「待て次号」かよ。 いや、再会のシーンまで書く予定だったんですが、ふとみたら長くなり過ぎていたんで、このへんで一度区切らないと・・思いまして。 今回は、ギャク満載で楽しかったです。草稿の一部を見せた友人にも「自分の名前を忘れても、口説きテクは忘れない!あいつ最高」とコメントを頂きました(苦笑)。 ちなみに、エドがハイデリヒを思い出しながら、甲板で海を眺めるシーン・・実はクルーの一員としてハボックが登場して「眠れないのか?」なーんて言いながら、エドに抱きつくなんてのも妄想していました。 エドは男性の腕に包まれる感触に、ついついハイデリヒを思い出して受け入れそうになっちゃうけど、ハイデリヒの「僕は僕だよ、誰かで代用しないで!」なーんて声が聞こえた気がして、股間を蹴り上げて逃げるっつーわけですが・・ハボックのジャン君があまりにも可哀相で、あえて没にしました。 |
初出:2005年8月13日 誤字訂正:同月14日 |